絶滅危惧のミノムシが復活?動物学者・今泉忠明氏が語るコウモリ飼育の切ない記憶と生態系の真実

季節は2019年11月29日、すでに晩秋の気配が濃くなってまいりました。かつて初夏の頃に我が家の植栽で元気に育っていたアゲハチョウの幼虫たちは、今では隣家の羽目板の隙間で静かに蛹へと姿を変えています。その様子をふと眺めていた時、大きなミノムシがゆらゆらとぶら下がっているのに気がつきました。この何気ない光景が、私の中に眠っていた中学1年生の秋の記憶を鮮烈に呼び起こしたのです。

当時の私にとって、放課後の日課といえばミノムシの採集でした。毎日欠かさず10匹は捕まえて帰らなければならないという、自分に課した厳しいノルマがあったのです。その理由は、父の頼みで「チチブコウモリ」という非常に珍しい種類のコウモリを自宅で飼育していたからに他なりません。現在でこそ、こうした小動物の餌にはペットショップで手軽に買えるミールワームが一般的ですが、当時はミノムシこそが貴重な栄養源だったのです。

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ケーキの箱から始まる夜の食事と、小さな命の重み

飼っていたコウモリは、意外にもケーキの空き箱を住処にしていました。夜の食事の時間になると、私は左手でそっと彼を握りしめ、自身の体温で温めてやるのです。冷たかった小さな体が温まってくると、コウモリは目を覚まし、あたりをキョロキョロと見回し始めます。そこが給餌の合図です。ピンセットでミノムシをつまんで口元へ運ぶと、猛然と噛み付いて食べることもあれば、気まぐれに吐き捨ててしまうことも少なくありませんでした。

グルメなコウモリの食欲を満たすため、私は必死に歩き回りました。近所のミノムシを獲り尽くすと、学校帰りに現在の東京都中野区鷺宮付近に広がっていた畑へと足を伸ばしたものです。日が暮れる頃にようやくノルマを果たせるような日々が続きましたが、やがて季節が進み、どんなに探してもミノムシは見つからなくなりました。そして、大切なコウモリは命を落としたのです。努力が報われない残酷な現実を、私はその時初めて知りました。

外来種の脅威とミノムシ激減の背景にある生態系トラブル

かつてはどこにでも生息し、庭木を荒らす厄介者として扱われていたミノムシですが、1990年頃を境にその数は全国で激減してしまいました。山口県や徳島県では絶滅危惧種に指定されるほど、その姿を消してしまったのです。この現象の裏には、中国などから日本へ侵入した「オオミノガヤドリバエ」という寄生バエの影響があると考えられています。特定の生物が外部からの要因で一気に駆逐される、生態系の脆さが浮き彫りになった出来事でした。

SNS上では、この話題に対して「昔はあんなにいたのに最近は見ないと思っていた」「コウモリの餌だったなんて驚きだ」といった声や、私と同じように「ミノムシの殻で遊んだ記憶がある」といった懐かしむ反響が多く寄せられています。2019年11月29日現在、再びミノムシの姿を見かけるようになったことは、個人的には喜びを禁じ得ません。しかし、増えれば再び害虫として嫌われる運命にあるのでしょう。

私たちが「当たり前」だと思っている身近な生き物たちの存在は、実は非常に繊細なバランスの上に成り立っています。かつて私がコウモリのために駆けずり回ったように、一つの命を繋ぐには膨大なエネルギーが必要なのです。ミノムシの復活をただ喜ぶだけでなく、それが現在の環境にどのような変化をもたらすのかを注視し、私たちは自然との共生のあり方を常に考え直さなければならないと強く感じています。

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