長年、地域の顔として親しまれてきた伊勢丹府中店が2019年09月30日にその歴史に幕を下ろしました。しかし、閉店後の跡地利用を巡る華やかな再出発の期待は、一転して法廷闘争という厳しい現実へと姿を変えています。東京都府中市などが出資するビル運営会社「フォルマ」が、百貨店大手の三越伊勢丹を相手取り、賃借料など約8000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたことが、2019年11月29日に明らかとなりました。
舞台となっているのは、京王線府中駅の目の前に位置する再開発ビル「フォレストサイドビル」です。この建物は、府中市が約2割、地権者が約半分を出資して設立された「第三セクター(官民共同出資の事業体)」であるフォルマが管理しています。地域経済の要ともいえる場所だけに、このトラブルは地元住民の間でも大きな波紋を広げており、SNSでは「駅前の活性化が遅れるのではないか」「信頼していた大手の対応として残念だ」といった不安の声が目立っています。
すれ違う両者の主張と決裂の真相
当初、三越伊勢丹側は百貨店に代わる新しい形態の商業施設を展開することで、フォルマ側といわゆる「基本合意(最終契約前の大枠の約束)」を交わしていました。ところが、具体的な賃料や契約条件の交渉を進める中で両者の溝は埋まらず、ついにフォルマ側から賃貸借契約の解約を申し入れる事態に発展したのです。合意形成がなされていたはずのプロジェクトが、細部の条件調整でこれほどまでにこじれてしまった背景には、厳しい小売業界の現状が透けて見えます。
訴状によれば、フォルマ側は2019年11月分の賃料や共益費が支払われていないと訴えています。これに対し三越伊勢丹側は、解約によって生じるはずの「損害賠償(契約不履行などで発生した損害の補填)」と、支払うべき賃料を相殺するべきだと主張しているようです。双方が一歩も譲らない構えを見せており、2019年10月31日付での提訴に至りました。三越伊勢丹側は「係争中のため詳細は控える」としつつも、事態が泥沼化したことへの遺憾の意を表明しています。
編集者としての私見ですが、地域の拠点である駅前ビルの再生は、一企業の損得を超えた公共性を持つ課題ではないでしょうか。たとえビジネス上の権利主張が正当であっても、長引く裁判によって跡地の活用が停滞すれば、最も不利益を被るのは府中市の市民です。百貨店離れが加速する時代だからこそ、大手企業と地元組織が手を取り合うべき局面で、このような対立が露呈してしまったことは非常に痛ましいと感じざるを得ません。一日も早い解決と、活気ある駅前の復活を願うばかりです。
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