2019年10月の台風19号によって甚大な被害に見舞われた宮城県丸森町では、現在、町商工会と役場が手を取り合い、心温まる支援を続けています。それは、地元の飲食店が腕を振るった「出来たての弁当」を避難所へ直接届けるという試みです。連日、温かい食事が届けられるたびに、避難生活を送る方々の間には自然と笑顔がこぼれています。
SNS上でも「地元のお店の味なら安心できる」「食の支援が地域の経済も回す素晴らしい仕組みだ」といった称賛の声が上がっています。単なる食糧支援に留まらず、地域の絆を再確認する活動として注目されているのです。避難所での食事は、どうしてもレトルトやパンなどの簡易的なものに偏りがちですが、この取り組みはその現状に一石を投じています。
2019年11月13日の午後、町中心部に位置する飲食店「あこがれ広場 えがお」では、店主の渡辺良仁さんが真心を込めて調理に励んでいました。この日のおかずは、銀ザケの塩焼きとエビフライをメインに、卵焼きやホウレンソウ、ヒジキといった彩り豊かな副菜が脇を固めます。栄養バランスが考慮された献立は、心身ともに疲弊した被災者の健康を支える生命線です。
特筆すべきは、台風被害に遭う前に収穫された地元の「新米」が惜しみなく使われている点でしょう。住み慣れた土地で育ったお米の味は、避難生活を送る人々にとって、何物にも代えがたい「故郷の記憶」を呼び起こすはずです。渡辺さんは「慣れ親しんだ手作りの味で、少しでもホッとしてほしい」と、温かい眼差しで語ってくださいました。
被災店舗の再起を支える、地域一体のバックアップ体制
この支援事業は、丸森町商工会が町役場と密に連携し、地元の協力店舗を募る形で実現しました。2019年11月7日から開始されたこの夕食配送サービスは、日替わりで異なるお店の弁当が届くため、被災者の方々にとって毎日の大きな楽しみとなっています。商工会の石井真一主幹は、被災者支援と地元店の経営支援の両立に強い意義を感じています。
実は、弁当を作っている飲食店側もまた、台風の爪痕に苦しむ被災者なのです。渡辺さんの店舗も一時的な断水に見舞われ、自宅は床上浸水の被害を受けました。2019年11月5日に営業を再開したものの、客足は以前の状態にはほど遠く、厳しい経営状況が続いています。こうした状況下での弁当発注は、店側の再起をかける貴重な一歩となるでしょう。
2019年11月13日の夕刻、避難所となっている小斎まちづくりセンターでは、届いたばかりの弁当を囲む人々の姿がありました。夫と共に避難生活を続ける郡司孝子さんは、愛情たっぷりの食事を口に運びながら、その美味しさに感謝の言葉を漏らしていました。栄養満点の献立は、長期化する避難生活で低下しがちな免疫力の維持にも大きく貢献しています。
私は、この取り組みこそが真の「地域共助」の形であると考えます。外部からの物資も大切ですが、地元のプロが作る食事は、被災者の自尊心を保ち、明日への活力を生み出す魔法のような力を持っています。困難な時こそ、地域でお金を回し、互いの顔が見える関係で支え合う。丸森町の挑戦は、災害大国・日本における復興のモデルケースとなるはずです。
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