かつてはバブル景気の象徴として語られたゴルフですが、現在の日本経済を占う上でも非常に重要な指標となっています。日本最大級の予約サイト「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」を率いる石坂信也社長は、現在の市場をどのように分析しているのでしょうか。長期的な人口減少という課題を抱えつつも、足元では意外なほど力強い消費の波が押し寄せているようです。
2019年現在の日本のゴルフ人口は、かつての1000万人超えから約670万人にまで減少しました。しかし、石坂氏は「景気回復の恩恵を受け、需要は底堅い」と断言します。特に注目すべきは、一部の高級コースで「会員権」の値上げが始まっている点です。会員権とは、特定のゴルフ場を優先的に利用するための権利を指しますが、かつての法人主体から、現在は個人の富裕層が主な買い手へとシフトしています。
こうした富裕層による積極的な投資は、日本の消費全体が依然として力強さを維持している証拠といえるでしょう。SNS上でも「憧れのコースは予約が取れない」「高い会員権が売れているのは景気が良い証拠か」といった声が散見されます。経済の最前線にいる人々の動きが、緑豊かな芝生の上で鮮明に可視化されているのです。
インバウンド市場に眠る巨大なポテンシャル
次に目を向けるべきは、世界中から日本を訪れる旅行者の存在です。石坂氏は、日本のゴルフ界が訪日客の潜在的な需要の「1割も取り込めていない」と鋭く指摘します。欧米では中国人の消費が目立ち、今後はインドの影響力も増すと予想されています。しかし、日本には米国のペブルビーチのような、世界基準の高級ゴルフリゾートが圧倒的に不足しているのが現状です。
さらに、日本の名門コースの多くが採用している「会員制」という仕組みが、外国人観光客にとっての大きな壁となっています。誰でもお金を払えばプレーできるオープンな環境を整える「構造改革」こそが、観光立国を目指す日本にとっての急務と言えるでしょう。この閉鎖性を打破できれば、ゴルフは日本の外貨獲得における強力な武器に化けるはずです。
ネット予約サービスの普及により、若手起業家や外資系企業に勤める高収入層の利用は確実に増えています。一方で、ゴルフに親しんできた「バブル世代」が定年退職を迎え、自由な時間を得ることで市場が活性化するという見方もあります。供給と需要に応じて価格を柔軟に変える「ダイナミック・プライシング」の浸透も、市場の健全な新陳代謝を促しているようです。
五輪を契機にした「体験」の拡大が未来を拓く
2020年に控えた東京五輪や、近年の女子プロゴルフの躍進により、ゴルフへの注目度はかつてないほど高まっています。しかし、石坂氏は「注目されることと、実際に競技を始めることの間には距離がある」と冷静な分析を崩しません。単なるブームで終わらせず、いかにして新規層をコースへ誘い出すかが重要となります。
そこで期待されるのが、仕事帰りにも気軽に楽しめる「シミュレーションゴルフ」などの新しい形態です。これは屋内でスクリーンに向かってボールを打つ最新のデジタル技術を用いたゴルフ体験で、初心者でもハードルを感じることなく楽しめます。こうした入り口を増やすことで、世代を超えて楽しめるゴルフの魅力を伝えていく必要があります。
私個人の見解としては、ゴルフ場は単なるスポーツ施設を超え、地域の環境資源や観光資源としての価値をもっとアピールすべきだと考えます。古き良き伝統を守ることも大切ですが、石坂氏が提唱するように、グローバルな視点での開放性とデジタル化を融合させることが、令和の日本経済を牽引する力になるのは間違いありません。
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