異業種との「共創」で医療の未来を切り拓く!GEヘルスケア・ジャパン多田荘一郎社長が挑む難路の哲学

医療機器の世界的大手であるGEヘルスケア・ジャパンを率いる多田荘一郎氏は、2017年2月の社長就任以来、一貫して「共創」というキーワードを掲げています。超高齢社会に突入し、医療費の増大や医師不足が深刻化する2019年現在の日本において、多田氏は医療機器メーカーの枠を超えた大胆な改革を進めています。

多田氏の戦略は、大和ハウス工業やJSRといった異業種、さらにはスタートアップ企業との積極的な提携にあります。診断や治療という従来の領域に留まらず、病気の予防から退院後のアフターケアまでをカバーする広大なビジョンを描いています。SNS上でも「医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるリーダー」として、その手腕に大きな注目が集まっています。

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どん底から這い上がった不屈のキャリア

多田氏のキャリアは、決して平坦なものではありませんでした。1995年4月1日に日本ゲートウェイに入社し、24歳で営業部長として250億円の売上を預かるほどの実績を残します。その後、あの原田泳幸氏からアップル日本法人への誘いを受けるも、多田氏は「ゼロから事業を立ち上げたい」と、あえて険しいスタートアップの道を選択しました。

しかし、2002年には立ち上げた事業が清算に追い込まれるという、人生最大の挫折を味わいます。投資家への謝罪に追われる日々の中で心身を削りながらも、身内の不幸をきっかけに「命を救う仕事」への転身を決意しました。この壮絶な経験が、現在の「難路を恐れない」強い精神力の源泉となっているのでしょう。

GEでの「逆転劇」と圧倒的な現場主義

2007年にGEへ入社した多田氏が最初に取り組んだのは、国内シェア3位に甘んじていた超音波診断装置の立て直しでした。ここで注目したいのが、医療現場のニーズを徹底的に分析する「BTO(受注生産方式)」に近いマーケティング視点です。これは、かつてIT業界で学んだ「顧客に必要なものを必要な分だけ提供する」という考え方が活かされています。

多田氏は、欧米では軽視されがちだった「肝疾患」に焦点を当て、日本・中国・韓国の共同プロジェクトを推進しました。各国の有力な医師と連携し、超音波の有用性を証明することで、わずか2年足らずで日本市場首位の座を奪還したのです。リーマン・ショックという不況下でも「今こそチャンスだ」と旗を振るリーダーシップには、編集者としても畏敬の念を禁じ得ません。

「ヴィースキャン」が変えた日本の地域医療

多田氏の功績として外せないのが、携帯型超音波装置「ヴィースキャン」の普及です。本来は電源の乏しい途上国向けだったこの製品を、多田氏は日本の「プライマリーケア」に最適だと見抜きました。プライマリーケアとは、風邪や怪我など、日常的な病気に対して地域のお医者さんが最初に行う総合的な診療のことです。

2011年3月11日の東日本大震災では、この小型装置が被災地でのエコノミークラス症候群の早期発見や、妊婦さんの胎児観察に大きな力を発揮しました。現場に足を運び、何が必要かを肌で感じてきた多田氏だからこそ実現できたイノベーションと言えるでしょう。

困難こそが革新を呼ぶ。私たちが学ぶべき姿勢

多田氏は現在、自宅のキッチンを自分の体形に合わせて設計するほどの料理好きという一面も持っています。週末には息子さんと餃子を包むなど、「人を喜ばせたい」という純粋な想いが仕事の原動力になっています。私は、彼のこの「サービス精神」こそが、冷徹な数字だけでは語れない経営の本質だと感じています。

「苦境こそがイノベーションを生む」という彼の言葉は、変革期にある全てのビジネスマンに突き刺さるはずです。安定した道を選ばず、常に課題解決のために難路を突き進む多田氏の背中は、2019年の日本経済において、私たちが進むべき灯台のような役割を果たしているのではないでしょうか。

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