農業産出額で全国第3位という圧倒的な実力を誇る茨城県が、いま官民一体となって世界の食卓を狙っています。主力のナシやサツマイモ、そしてコメといった特産品が、アメリカや東南アジアの市場で熱い視線を浴びているのです。2019年に発生した台風の被害も限定的に留まり、供給体制が維持されている点は、産地としての地力の強さを物語っているといえるでしょう。
茨城県下妻市に広がるナシ畑では、秋の深まりとともに輸出作業が活気づいています。JA常総ひかりの貯蔵庫からは、2019年11月中旬に約1.3トンのナシがタイに向けて旅立ちました。今回出荷されたのは、大玉で強い甘みが特徴のブランド品種「恵水(けいすい)」です。現地商社との商談も順調に進んでおり、11月中にはさらに同量の追加出荷が予定されています。
タイの店頭では、韓国産の2.5倍から3倍という高値で販売される見込みですが、その強気な価格設定には確固たる自信が裏打ちされています。担当者によれば、日本産の品質への信頼は絶大であり、本物の味を求める現地の富裕層から選ばれているとのことです。SNS上でも「日本のフルーツは宝石のようだ」といった感嘆の声が上がっており、そのブランド力は確実に浸透している模様です。
北米市場への進出も加速しています。2019年夏には県産ナシの代表格「幸水(こうすい)」がアメリカへ初輸出され、用意された1.7トンが瞬く間に完売しました。続いて「豊水」や「新高」も合計4.5トンが海を渡っています。サツマイモも同様で、東南アジアからカナダへと販路を広げ、現地で「ヤキイモ」の実演販売を行うなど、日本独自の食文化を伝える戦略が功を奏しています。
急成長するコメ輸出と「茨米」のブランド戦略
2018年度の県産青果物の輸出額は約2億円と前年度比で63%も急増しました。中でも際立っているのがコメの躍進で、輸出額は約8500万円と前年の5.7倍という驚異的な数字を記録しています。この立役者は、2016年から活動を本格化させている県産米輸出推進協議会です。彼らは輸出専用に多収量銘柄を栽培し、アメリカでは「茨(うばら)米」の名で展開しています。
現地スーパーでの試食会には日本の農家自らが参加し、消費者に直接魅力を伝えてきました。香港やシンガポールでも支持を広げ、当初わずか8名だった生産者の輪は約70名にまで拡大しています。輸出米を扱う販社の代表は、消費者が手に取りやすい絶妙な価格設定を維持できていると自負を覗かせます。生産者の熱意が、海外の食卓に茨城の風味を届ける原動力となっているのです。
しかし、さらなる躍進の前には高い壁も存在します。特定の地域への輸出制限がいまだに残っているほか、特にアメリカでは「植物検疫」という厳しいハードルが立ちはだかります。植物検疫とは、害虫や病気の侵入を防ぐために輸出入の際に行われる公的な検査のことです。この基準をクリアするため、農家はナシの実がまだ小さいうちから、手作業で一つずつ丁寧に袋をかける作業を強いられています。
こうした膨大な手間とコストは農家の大きな負担となっており、韓国などの競合国との激しいシェア争いも無視できません。私は、この「高品質」という付加価値をいかに利益として還元できるかが、持続可能な農業の鍵になると考えます。県側も「選ばれる商品づくり」に改めて気を引き締めており、茨城の挑戦は日本の地方創生における重要なモデルケースとなるはずです。
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