日本の投資家、特にリタイア世代から絶大な支持を集めてきた「毎月分配型投信」に、今まさに大きな転換期が訪れています。2019年12月03日現在の調査によると、投資信託が投資家へ支払う分配金の総額が、ピーク時と比較して半減するという驚きのデータが明らかになりました。かつての勢いはどこへ行ってしまったのでしょうか。
日興リサーチセンターの集計によれば、2019年1月から10月までの累計分配金額は約1兆9814億円にとどまっています。このままのペースでは、2019年通算で3兆円を割り込むことが確実視されているのです。これは、世界的な金融危機に見舞われた2009年以来、実に10年ぶりの低水準という、資産運用業界にとって歴史的な節目となっています。
この激減の背景にあるのは、資産運用会社による「分配金の見直し」という断行です。かつて年間約6兆2000億円(2015年)もの分配金が支払われていた時代とは、市場環境も当局の視線も一変しました。SNS上では「お小遣い感覚で助かっていたのに残念」という声がある一方で、「ようやく不健全な仕組みが是正されるのか」といった冷ややかな意見も飛び交っています。
なぜ今「毎月分配型」が逆風にさらされているのか
そもそも分配金とは、企業でいうところの配当金に近い性質を持ちます。しかし、運用収益を超えて元本を取り崩しながら支払われる「特別分配金」は、投資効率を著しく悪化させる要因として批判の矢面に立たされました。金融当局も「複利効果が得られにくい」と警鐘を鳴らし、証券各社が積極的な販売を控えるようになったことが、残高減少に直結しています。
ここで解説しておきたいのが「複利効果」という言葉です。これは、運用で得た利益を再び投資に回すことで、利益が利益を生み、雪だるま式に資産が増えていく仕組みを指します。毎月分配金として利益(あるいは元本)を外に出してしまうことは、この魔法のような成長機会を自ら捨てていることに他ならず、長期的な資産形成を阻害してしまうのです。
さらに追い打ちをかけるのが、世界的な超低金利政策の影響です。債券からの利息収入が細ってしまったため、運用会社は分配金を維持したくても物理的に不可能な状況に追い込まれました。事実、2019年10月までの時点で、毎月分配型投信の約2割が分配金の引き下げを決断しており、高還元を謳うモデルは限界を迎えつつあるといえるでしょう。
健全な資産運用への回帰とバランス型投信の台頭
マネーの流れは今、より堅実な方向へとシフトしています。世界中の株式や債券に分散して投資する「バランス型投信」が脚光を浴び、その残高は2019年9月末に初めて10兆円の大台を突破しました。分配金という目先のキャッシュフローよりも、資産そのものの成長を重視する賢明な投資家が増えている証拠ではないでしょうか。
私自身の見解としても、今回の分配金減少は「投資の正常化」に向けた不可避なプロセスだと考えています。運用で稼げていないのに分配金だけを出し続けるのは、自らの足を食べて空腹を凌ぐような危うい行為です。「運用成績が向上した結果として分配金が増える」という投資の本来あるべき姿に立ち返ることが、結果として個人の資産を守ることに繋がります。
これからの投資信託選びでは、目先の分配金額に惑わされず、そのファンドがどれだけ効率的に資産を増やせる力を備えているかを見極める目が不可欠になるでしょう。毎月分配型という選択肢が消えるわけではありませんが、自分のライフプランに本当に必要なのは「分配」なのか「成長」なのか、改めて自問自答すべき重要な局面が来ているようです。
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