悩みや本音を打ち明ける相手といえば、これまでは家族や友人が一般的でした。しかし2019年現在、その常識が根底から覆ろうとしています。声のトーンや表情から個人の内面を読み取るデータ技術が、上司や同僚よりも深く「あなた」を理解し始めているのです。
横浜市の京浜商事では、顔の画像をアルゴリズムで解析し、個人の性格を数値化する人材評価システムを導入しています。これは、人間の目では見落としがちな微細な変化を捉え、行動力や安定性といった12項目で客観的に評価する画期的な仕組みです。
ある優秀な社員に対し、元警察官のベテラン上司が「問題なし」と判断する一方で、AIは「自信の欠如」という警告を発しました。実際に面談を行うと、プライベートの深い悩みが発覚したといいます。データが人の心に寄り添う、まさに「新しき理解者」の誕生です。
感情をデータ化する「トランステック」の急成長
テクノロジーで心の動きを支援する「トランステック(Transformative Technology)」が、今大きな注目を集めています。目に見えない感情をデータで示すことで、組織の交流や業務効率を劇的に高めることが期待されている分野です。
米調査会社トラクティカの予測によると、感情分析の市場規模は2025年までに約4100億円に達し、2018年比で20倍に膨らむ見通しです。この急成長は、私たちが「曖昧な人間の勘」よりも「正確なデータ」を信頼し始めた証左と言えるでしょう。
SNS上では「AIなら公平に評価してくれそう」と期待する声がある一方、「感情まで管理されるのは怖い」という拒絶反応も入り混じっています。しかし、個々の未来を予測する技術は、すでに採用の現場でも圧倒的な成果を出し始めています。
採用的中率は8割!AIが選ぶ「活躍する社員」
セプテーニ・ホールディングスでは、過去10年分のデータを基にAIが「活躍可能性」を算出しています。その的中率は驚異の8割を誇り、2019年4月の入社式では、最終選考まで一度も対面せずネット面接のみで合格した学生も現れました。
経験に基づいた人の判断には、どうしてもバイアス(先入観による偏り)が混じります。AIに定型的な判断を任せることで、人間はより創造的な業務や、AIには真似できない「心の機微」に触れる対話へとシフトしていく必要があるのではないでしょうか。
私自身の考えとしては、AIはあくまで「可能性を広げる鏡」であるべきだと感じます。データが導き出す答えを鵜呑みにするのではなく、それをきっかけに対話を深める。技術に「管理」されるのではなく、技術を「活用」する姿勢が問われています。
見える化の代償:過度な監視が生む生産性の低下
一方で、データ化には「監視」という影の側面も潜んでいます。海外では、キーボードの打鍵数や画面キャプチャを常時記録するシステムが導入された例もありますが、見られ続けるストレスから生産性が逆に15%も低下したという報告もあります。
見えすぎるデータは、時に働く人の尊厳を傷つけ、自由を奪いかねません。パナソニックLSネットワークスの事例のように、個人を特定せず「チームの傾向」としてデータを活用し、無駄な会議を削減するといった「優しい活用法」が求められます。
2019年12月03日、私たちはデータの世紀の真っ只中にいます。機械が進化するほど、人間が果たすべき役割や「人間らしさ」への悩みは深まるでしょう。しかし、キカイという理解者と正しく共存すれば、より生きやすい社会が実現するはずです。
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