2019年04月から、日本でも年間5日以上の有給休暇取得が企業に義務付けられました。しかし、制度が整いつつある一方で、私たちの心には「本当に休んでいいのだろうか」という迷いが消えないのも事実でしょう。フランス企業の代表を務める知人は「日本人は休み方が不器用だ」と指摘しています。
実際のデータを見ても、厚生労働省による2018年「就労条件総合調査」では、有給休暇の平均取得日数は9.3日で、取得率は51.1%に留まっています。欧米諸国と比べると、この数字は決して高いとは言えません。日本人は祝日こそ多いものの、長期休暇を豪快に楽しむ文化がまだ薄いのかもしれません。
SNS上では「休んでも仕事のメールが気になってしまう」という悲痛な声や、「休み明けの仕事が怖くてリラックスできない」といった意見が目立ちます。せっかくの休日が、ただ「体力を温存するだけの時間」になっている現状は、非常にもったいないことではないでしょうか。
仕事の質を高める「リカバリー体験」の4要素
パーソル総合研究所の研究員である井上亮太郎氏は、真の休息を「リカバリー体験」と呼んでいます。これは単なる怠慢ではなく、仕事で削られた精神的なエネルギーを元の水準まで回復させる重要なプロセスです。そして、これには「4つの柱」が必要であると定義されています。
1つ目は「心理的距離」です。これは職場から物理的に離れるだけでなく、頭の中から仕事の悩みを完全に追い出す状態を指します。2つ目は「リラックス」で、あえて活動を制限し、心身を深い安らぎに浸らせることです。この2点は、休息の基本と言えるでしょう。
3つ目は意外かもしれませんが「熟達」です。趣味やボランティア、あるいは「リカレント教育」と呼ばれる社会人の学び直しなど、多少の努力が必要でも、達成感を得られる活動に没頭することが、実は精神的な回復を早めるのです。
最後は「コントロール」です。誰かに強制された予定ではなく、自分の時間を自分自身の意志で管理できているという実感が、ストレス耐性を高めます。これら4つを意識することで、仕事への情熱である「ワークエンゲージメント」が劇的に向上することが研究でも証明されています。
編集者が見る「休み方」という新時代の教養
私は、これからの時代「休み方」こそが最強のビジネススキルになると確信しています。2019年11月12日現在の状況を鑑みれば、働き方改革は単なる労働時間の短縮を目指すフェーズから、いかに密度の高い時間を過ごすかという質的な転換期に差し掛かっています。
「休むのは悪だ」という古い価値観を捨て、セルフマネジメントの一環として戦略的に休暇を設計すべきです。職場以外のコミュニティを持ち、仕事以外の「顔」を充実させることが、結果として翌日のビジネスパフォーマンスを最大化させる最短ルートになるでしょう。
記事を通じて、皆さんが「ただなんとなく過ぎる休日」を、未来への投資としての「質の高い休息」へと変えていけるよう願っています。休みを使いこなす人こそが、これからの複雑な社会を生き抜く真のプロフェッショナルなのです。
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