Google首脳陣交代とセールスフォースの試練。巨大テック企業が直面する「成長の踊り場」と市場の冷徹な審判

2019年12月04日の米株式市場は、米中貿易協議の前進への期待から、ダウ工業株30種平均が4営業日ぶりに反発し、146ドル高という活気ある展開を見せました。特に、中国市場との関わりが深いアップルなどの銘柄が買われる中、市場の視線は一つの大きな時代の節目に注がれました。それは、グーグルの親会社であるアルファベットの共同創業者、ラリー・ペイジ氏が最高経営責任者(CEO)を退任するという衝撃的なニュースです。

この電撃発表に対し、SNS上では「一つの時代が終わった」「創業者が去る寂しさはあるが、実務を支えてきたピチャイ氏なら安心だ」といった声が広がっています。市場も同様に、2015年からグーグルを牽引してきたスンダー・ピチャイ氏が持ち株会社のトップを兼務する新体制を好意的に受け止め、株価は前日比で2%上昇しました。創業者のカリスマ性に頼る段階を終え、組織としての安定感を選んだことが評価されたのでしょう。

スポンサーリンク

青年期を迎えたテック企業たちと「成長のジレンマ」

ペイジ氏は今回の退任に際し、「会社が人間なら21歳の若者となり、巣立ちの時だ」と情緒的な言葉を残しました。確かに、25歳のアマゾンや15歳のフェイスブックなど、西海岸のテック巨人は人間で言えばまだ血気盛んな若者です。しかし、若さゆえの急成長が当たり前だと思われている企業にとって、成熟期への移行は「成長の鈍化」というネガティブなレッテルを貼られるリスクと隣り合わせなのが、株式市場の厳しい現実です。

その象徴的な例が、2019年03月に創業20周年を迎えたCRM大手のセールスフォース・ドットコムです。CRMとは「顧客関係管理」の略称で、顧客の情報をITで一元管理し、営業活動を効率化するシステムのことを指します。同社は2019年08〜10月期決算で売上高33%増という驚異的な数字を叩き出し、パナソニックやイオンといった世界的大企業との新規契約も勝ち取りました。しかし、翌日の株価は3%安という厳しい結果に終わりました。

投資家が失望したのは、素晴らしい実績ではなく、2020年以降の売上予測がわずかに保守的だった点です。どれほど輝かしい過去があっても、市場は常に「明日は今日よりどれだけ伸びるのか」という未来の数字しか見ていません。期待値が極めて高いテック業界では、3年で売上を倍増させるという計画ですら、少しの陰りが見えるだけで売り材料にされてしまうのです。これは、ある種の「成功者の呪い」と言えるかもしれません。

デジタル投資の減速と投資家の冷徹な視線

人事向けソフト大手のワークデイもまた、2019年08〜10月期の成長率が前の期の32%から26%へ低下したことで、株価が5%も急落しました。これまでは「企業のデジタル変革(DX)」という追い風に乗ってきましたが、製造業を中心に景気が減速する中で、法人向けIT投資そのものにブレーキがかかりつつあります。投資家の興味が、夢のある「成長性」から、現実的な「収益の安定性」へと移り変わる過渡期に来ているようです。

個人的な見解を述べれば、現在の市場は少し過剰反応しすぎているようにも感じます。企業が成熟し、持続可能な成長へと舵を切るのは健全な進化であり、単なる数字の伸び率だけで企業の価値を断じるのは早計ではないでしょうか。しかし、次々と新しいスター企業が誕生するIT業界において、投資家は「成長が終わった」と見なした瞬間に次の有望株へと乗り換えてしまいます。見守る余裕のない、あまりに冷徹でスピード感あふれる世界です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました