エッセイストの岸本葉子さんが、冬の寒さを避けて屋内で開催された句会の題材として、生まれて初めてバッティングセンターを訪れた様子を綴っています。2019年12月05日のこと、都心のゲームセンターの2階に足を踏み入れた彼女を待っていたのは、未知の光景でした。
金網の向こうには、スクリーンに映し出された投手がボールを投げる最新の設備が整っており、初心者でも挑戦しやすい70キロの低速打席を選んだそうです。バットを握る経験も皆無だった彼女は、同行した経験者の女性から構えを教わることからスタートしました。
SNSなどでは「大人になってからの初めての体験は、思わぬ筋肉痛や発見があって面白い」という声が多く聞かれますが、岸本さんの挑戦もまさに発見の連続だったようです。1枚で20球打てるカードを購入し、いよいよケージの中へと一人で足を踏み入れました。
頭と身体のギャップに驚き!20球の真剣勝負
第1球が放たれた瞬間、岸本さんはそのスピードと重さに圧倒されました。最も遅い設定とはいえ、飛んでくるボールは想像以上に鋭く、慌ててバットを振るものの、重さに振り回されて体勢を崩すばかりで、1打席目は20球すべてが空振りに終わってしまったのです。
動体視力とは、動いている対象を識別する能力のことですが、かつてイチロー選手が現役末期に課題として挙げたこの感覚の重要性を、彼女は身をもって体験しました。2打席目からは眼鏡を装着し、ようやくバットにボールがかすり始めるまで進歩を見せます。
「バットの芯で捉える」という言葉がありますが、これはバットの中で最も反発力が強く、打球が遠くへ飛ぶポイントのことです。3打席目の最後で、ようやくその感覚を掴みかけたところで終了となり、彼女の心は完全にバッティングの虜となってしまいました。
50代から目覚めた体軸の意識とリベンジへの情熱
岸本さんは50代に入ってから、加圧トレーニングや呼吸法を通じて「体軸」という意識を大切にしています。体軸とは身体の中心を通る一本の線のようないわゆる「芯」のことで、これを安定させることで運動パフォーマンスを向上させることが可能です。
心身のコントロールには自信を持っていたものの、頭での理解と実際の動作にこれほどの差があることに、彼女は深い衝撃を受けました。しかし、この「し残した感」こそが、大人になってからの新しい情熱に火をつけるスパイスになったことは間違いありません。
個人的には、俳句を作る会という静かな場において、心が激しいバッティングの感触に支配されてしまうという対比が非常にユーモラスで素敵だと感じます。こうした新しい挑戦への意欲は、何歳になっても生活に輝きを与えてくれる素晴らしいスパイスでしょう。
コメント