サントリー「透明なビール」の誤算に学ぶ!ヒットの裏に隠された“黒歴史”と逆転のマーケティング戦略

ヒットメーカーとして知られるサントリーホールディングスですが、その華々しい実績の裏には、実は数多くの「失敗の宝庫」が眠っています。商品開発やマーケティングの世界では、良かれと思って顧客のニーズを読み過ぎた結果、ターゲットから外れてしまうことが珍しくありません。かつて2007年に投入された「アワーズ」という泡立つチューハイも、技術的な課題以前に「そもそも乾杯の席でチューハイに泡は求められていない」という市場との乖離により、苦い経験を残しました。

なかでも記憶に新しい挑戦といえば、2018年06月19日に鳴り物入りで登場したペットボトル入りの透明ノンアルコールビール「オールタイム」でしょう。この商品は「オフィスでも周囲の目を気にせずビール気分を味わいたい」という、潜在的な心理的ハードルを取り払うために開発されました。車の運転手向けに始まったノンアルコール飲料が、健康志向やリフレッシュ目的へと多様化するなかで、サントリーは市場のさらなる拡大を狙ったのです。

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透明なビールが直視した「常識」という名の高い壁

開発当時は、透明でありながらビールの風味を楽しめる技術力に驚きの声が上がりましたが、SNSなどでは「仕事中に飲むのはさすがに抵抗がある」「見た目が水にしか見えないのは寂しい」といった賛否両論が巻き起こりました。マーケティング担当者は、消費者が抱く「日中からビールを飲むのは気が引ける」という先入観こそが壊すべき壁だと確信していたのでしょう。しかし、長年培われた個人の常識や習慣は、短期間の仕掛けだけで覆せるほど甘くはありませんでした。

この「オールタイム」はコンビニエンスストアを主戦場として展開されましたが、初動の勢いが重視される棚の争奪戦において、1年を待たずして終売という厳しい結果を突きつけられました。新しい市場を育てるには腰を据えた姿勢が不可欠ですが、スピード感が求められる販売チャンネルとのミスマッチも、失敗の教訓と言えるでしょう。私個人としても、ビール特有の黄金色がもたらす視覚的な満足感は、味覚以上に重要な要素だったのではないかと感じています。

失敗を糧に掴んだ「健康」という名の勝利

しかし、サントリーの真髄は転んでもただでは起きない執念にあります。彼らは攻め口を「透明感」から「健康機能」へと大胆にシフトさせました。2019年07月16日に発売された機能性表示食品「からだを想う オールフリー」は、内臓脂肪を減らすという明確なベネフィットを打ち出し、当初の計画を2倍も上回る爆発的なセールスを記録しています。ユーザーからは「これなら飲む理由がある」と、圧倒的な支持を集める結果となりました。

他社でも過去には1本200円という高価格帯の「別格」シリーズなどが苦戦した例がありますが、これらは「自分向けの商品だ」という納得感を消費者に与えきれなかったことが共通の課題です。一見すると無謀に思える新商品を次々と世に送り出す企業文化こそが、イノベーションの源泉なのかもしれません。数々の“黒歴史”や苦労を積み重ねることでしか、真のヒット商品は生まれないのだと、今回の事例は強く物語っているでしょう。

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