私たちは日々、仕事や家事で体を動かしていますが、自分の筋肉がどれくらい疲れているかを正確に把握するのは意外と難しいものです。そんな中、中京大学の渡辺航平准教授らの研究チームが、これまでの常識を覆す画期的な筋疲労評価手法を発表しました。2019年11月19日、この技術は筋肉本来の疲れと、脳から送られる神経信号を明確に区別できると報じられています。
運動をする際、私たちの体では骨格筋が伸び縮みすることで関節を動かしていますが、負荷がかかり続けると「筋疲労」が発生します。これは細胞内に疲労物質が蓄積してパワーが落ちる現象ですが、実はもう一つ、脳が勝手にブレーキをかけてしまう「神経性の疲労」も存在します。従来はこれらが混ざった状態で測定されていたため、正確な筋肉の状態を知ることは困難だったのです。
これまでの測定法は「最大出力で力を出す」必要がありましたが、これでは全力を出せない高齢者や怪我を抱えたスポーツ選手には不向きでした。そこで研究チームは、脳が筋肉へ送る信号の遅れに着目したのです。脳は体が壊れないよう無意識に信号をセーブしますが、新しい手法はこの「脳の影響」を排除し、純粋な筋肉だけのコンディションを数値化することに成功しました。
具体的には、皮膚表面の電極に加えて、神経と筋肉の接合部にもアプローチする独自の測定シートを使用します。測定実験では、太ももの筋肉を動かす速さが秒速3.24メートルから2.72メートルに低下したことが確認されました。このように「筋電(筋肉を動かす電気信号)」の伝達速度を細かく分析することで、誰でも無理なく、ありのままの疲労度を測れるようになったのは大きな進歩です。
ウェアラブル端末としての実用化へ期待が高まる
この技術はすでにアメリカで特許を取得しており、将来的にはスマートフォンと連動した小型デバイスの開発も計画されています。SNSでは「自分の限界が可視化されるのは助かる」「リハビリの目安にしたい」といった声が上がっており、特に過酷な労働現場やプロスポーツの分野で、故障を未然に防ぐためのセーフティネットとして熱い視線が注がれているようです。
私個人としても、この技術が普及すれば「根性論」に頼らないスマートな健康管理が当たり前になると確信しています。疲労が「見える化」されれば、無理なトレーニングによる怪我を減らせるだけでなく、高齢者のフレイル(虚弱状態)予防にも大きく貢献するでしょう。最先端の科学が私たちの日常を守る盾になる日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
コメント