南米大陸の経済が、かつてない激震に見舞われています。2019年12月01日現在、ブラジルやチリといった主要国において、各国通貨が対ドルで過去最安値を塗り替えるという深刻な事態に陥っているのです。世界的に見れば、2019年7月の米国の利下げ以降、多くの新興国通貨は息を吹き返してきました。しかし、財政赤字と経常赤字の双方を抱える「双子の赤字」に苦しむ南米諸国だけは、その恩恵にあずかることができず、独歩安の展開を強いられています。
SNS上では、現地の物価高騰を嘆く声や「南米経済はどこまで沈むのか」という不安、さらには政府の対応への不信感が渦巻いています。特に投資家の間では、今回の通貨安が単なる経済指標の悪化ではなく、社会構造の根幹を揺るがす地政学リスクとして捉えられており、緊張感が一気に高まっています。この背景には、輸出の主軸である資源価格の低迷に加え、市民の不満が爆発したことによる政情不安が、重くのしかかっているのです。
チリの乾坤一擲!外貨準備高の半分を投じる巨額介入
特に注目すべきは、チリ中央銀行が打ち出した驚天動地の策でしょう。同行は2019年11月28日、翌12月02日から総額200億ドル、日本円にして約2兆1900億円という巨額のドル売り・ペソ買い介入を実施すると表明しました。これは同国の外貨準備高、つまり国が非常時に備えて蓄えているドルなどの資産の約半分を使い切るという、過去20年で最大規模の異例の決断です。通貨の暴落を力ずくで抑え込む「通貨防衛」への執念が伺えます。
チリ・ペソは2019年11月28日に一時1ドル=830ペソまで急落し、年初からの下落率は約16%に達しました。この混乱の引き金は、2019年10月中旬にピニェラ政権が発表した地下鉄運賃の値上げに対する抗議活動です。デモは激化し、2019年11月中旬に予定されていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の開催中止を余儀なくされる事態に発展しました。政治の混迷が続く中、市場からは介入の効果を疑問視する冷ややかな視線も向けられています。
金利引き下げとインフレのジレンマに陥るブラジル
一方、南米の大国ブラジルも苦境に立たされています。2019年11月27日には、通貨レアルが1ドル=4.26レアルと過去最安値を更新しました。ブラジル中央銀行も介入を試みたものの、焼け石に水の状態が続いています。興味深いのは、主要株価指数であるボベスパが最高値圏にある一方で、実体経済の冷え込みが通貨を押し下げている点です。株価が好調でも、通貨が売られるという「歪み」が生じているのは、非常に危ういバランスだと言わざるを得ません。
景気刺激のために2019年10月末に政策金利を5%まで引き下げたブラジルですが、レアル安が輸入コストを押し上げ、物価が上昇する「インフレ」の懸念を強めています。これにより、さらなる利下げによる景気下支えが困難になるという悪循環が懸念されています。私は、この南米の混乱は一時的なものではなく、グローバル経済における資源依存型モデルの限界を示唆していると感じます。単なる市場介入だけではなく、信頼を回復させる抜本的な政治改革こそが、今求められているのではないでしょうか。
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