2019年11月14日、福岡の地で開催されている大相撲九州場所は5日目を迎え、会場は割れんばかりの歓声に包まれました。この日の注目カードは、角界きっての軽量力士である炎鵬関と、巨漢として知られる碧山関の初対戦です。体重わずか98キロの炎鵬関に対し、碧山関は199キロと、その差はなんと101キロに達しました。
土俵上で向かい合った際、炎鵬関の視界は碧山関の巨大な体躯で完全に遮られたといいます。本人は後に「飲み込まれてしまうのではないか」という恐怖心さえ抱いたと明かしていますが、いざ制限時間がいっぱいになると、その表情からは一切の迷いが消えていました。小兵(身体の小さな力士)が巨漢に立ち向かう姿は、まさに現代の「牛若丸」を彷彿とさせます。
立ち合いと同時に、炎鵬関は真っ向から勝負を挑みました。碧山関の強力な突きをまともに浴びながらも、低い姿勢を崩さず、突きには突きで応戦する強気な姿勢を見せます。通常、これほどの体格差があれば一気に押し出されてしまうものですが、炎鵬関は持ち前の驚異的な身体の柔らかさを駆使して、土俵際で驚異的な粘りを発揮しました。
作戦を「中に入れなければ外から崩す」と定めていた炎鵬関は、碧山関が業を煮やして引いた瞬間、その好機を逃しませんでした。絶妙なタイミングで繰り出した「引き落とし」により、巨漢の碧山関は土俵に這いつくばることとなったのです。スピードと低さを武器にした多彩な攻めに、元関脇の碧山関も足元をすくわれる形となりました。
SNSも熱狂!地力で掴み取った幕内4場所目の快進撃
この劇的な勝利に、SNSでは「これぞ大相撲の醍醐味!」「炎鵬の技のキレが異次元すぎる」といった絶賛のコメントが相次いでいます。弱きを助け強きをくじく「判官びいき(不遇な者や弱い者に同情し応援すること)」の心理もあるでしょうが、それ以上に、彼の技術力の高さそのものがファンを惹きつけてやまない魅力となっているのでしょう。
炎鵬関は自らの取り口を振り返り、「相手が嫌がっているのが分かった」と手応えを口にしています。前頭6枚目という自己最高位の番付で迎えた今場所ですが、序盤の5日間を4勝1敗という好成績で駆け抜けました。特筆すべきは、その勝ち星のうち3つが三役(大関・関脇・小結の総称)経験者から挙げたものであるという点です。
私は、炎鵬関の強さは単なる「奇策」ではなく、着実に積み上げられた「地力」にあると考えています。体格差という絶対的な不利を、圧倒的なスピードと柔軟性で無効化するスタイルは、伝統的な相撲の美学を体現していると言えるでしょう。彼の存在は、体格がすべてではないという希望を多くのファンに与えてくれています。
本人は「一日一番、当たって砕けるだけです」と控えめな言葉に終始していますが、その瞳にはさらなる高みを見据える強い意志が宿っています。2019年11月15日からの後半戦においても、この小兵力士がどれほど大きなインパクトを土俵に残してくれるのか、日本中の相撲ファンがその一挙手一投足に注目しています。
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