2019年11月19日、京都大学医学部附属病院は、入院中の男性患者に対して本来の基準を大幅に上回る高濃度の薬剤を投与し、その後死亡させるという極めて重大な医療事故が発生したことを公表しました。腎機能障害を抱えながら心不全の治療を受けていた患者さんは、検査に伴う合併症を防ぐための処置を受けるはずが、病院側の度重なる過失によって命を落とす結果となってしまいました。
事故のきっかけは、CT検査で使用する「造影剤」によるアレルギー反応を抑えるための処置でした。造影剤とは、画像診断において臓器や血管をくっきり映し出すために欠かせない薬剤ですが、体質によっては副作用を引き起こすことがあります。これを予防するため、担当医は体液の酸性度を調整する「炭酸水素ナトリウム」の投与を決定しましたが、ここで痛恨の入力ミスが発生したのです。
当時の状況によれば、医師は電子カルテ上で薬剤を選択する際、本来使用すべき濃度の約6.7倍にも及ぶ高濃度の製剤を誤って指定してしまいました。看護師はこの指示に基づいて点滴を開始しましたが、投与中、男性は血管の激しい痛みとともに、必死に医師を呼んでほしいと訴え続けていたといいます。現場ではアラートが鳴り響いていたはずの異変ですが、悲しいことに点滴が中断されることはありませんでした。
SNS上では「高濃度製剤がなぜ簡単に選べてしまったのか」「患者の痛みの訴えがなぜ無視されたのか」といった、医療安全管理体制への厳しい批判や困惑の声が渦巻いています。医療現場の多忙さは察するに余りありますが、苦痛を訴える患者さんの言葉こそが、エラーを食い止める「最後の砦」であったはずです。システムの不備と現場の判断ミスが連鎖した事実は、重く受け止めなければなりません。
繰り返されたミスと失われた命の重み
投与当日に男性は心停止に陥り、心臓マッサージなどの懸命な救急措置によって一度は心拍が再開しました。しかし、蘇生のための胸骨圧迫が原因とみられる肺出血が止まらず、容態は悪化の一途をたどります。懸命の治療もむなしく、投与から6日後、全身の臓器が正常に機能しなくなる「多臓器不全」によって、帰らぬ人となりました。
今回の事故において私が最も問題だと感じるのは、単なる入力ミスに留まらず、投与現場で患者さんの異変を察知し、中止する機会を逸した点です。医療現場における「ダブルチェック」は形式的なものではなく、命を守るための対話であるべきです。高度な医療を提供する大学病院だからこそ、個人の注意力に頼り切らない、物理的なエラー防止策の再構築が急務であると考えます。
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