中部経済の「自動車一本足打法」に黄色信号?2019年11月、日銀が景気判断を下方修正した真実

全国的に見ても圧倒的な力強さを誇ってきた中部地方の経済に、今、静かな変化が訪れています。2019年11月19日、日本銀行名古屋支店は東海3県の景気判断を3年1カ月ぶりに引き下げました。これまで維持してきた「拡大している」という表現から「拡大ペースが緩やかになっている」へと一歩後退した形です。ネット上では「ついにトヨタ城下町にも影が」「部品メーカーの悲鳴が聞こえてくる」といった、地場産業の先行きを不安視する声が次々と上がっています。

今回の景気判断引き下げの大きな要因は、主軸である自動車産業の内部で起きている深刻な「温度差」にあります。トヨタ自動車本体の業績は、海外販売の好調に支えられ依然として堅調な動きを見せています。しかしその足元では、ピラミッドを支える部品メーカー各社が苦境に立たされています。名古屋税関の調べによると、2019年9月時点で自動車部品の輸出額は11カ月連続のマイナスとなっており、完成車メーカーの華々しい数字とは対照的な結果が浮き彫りとなりました。

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米中摩擦の荒波と「CASE」がもたらす構造変化

特に厳しい状況にあるのが、トランスミッションなどの「ギアボックス」分野です。大手アイシン精機が業績予想を下方修正するなど、その影響は隠せません。背景には、長期化する米中貿易摩擦による中国市場の冷え込みがあります。部品メーカーは国内外の多くのメーカーと取引しているため、世界的な景気減速の波を直接受けてしまうのです。これに加えて、近年相次ぐ大型台風などの自然災害も、工場の稼働や物流といった生産活動に大きな影を落としています。

中部経済の脆さは、その「自動車依存度」の高さに集約されています。2015年の基準データでは、中部3県の産業に占める自動車の比重は40.6%に達しており、全国平均の17.9%を大きく上回る突出した数字です。かつては工作機械やセラミックなどの多様な産業が支えていましたが、この10年で自動車への集中がさらに加速しました。100年に一度の変革期と言われる「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の荒波の中で、この偏りは大きなリスクとなります。

「2番打者」の不在を救うのは次世代半導体か

自動車に次ぐ産業の柱、いわゆる「2番打者」が育っていない点も深刻です。世界的な工作機械メーカーが集結する中部ですが、中国の設備投資抑制により、受注は2019年9月まで11カ月連続で前年割れが続いています。しかし、暗いニュースばかりではありません。人手不足を解消するための自動化需要は根強く、オークマなどの各社は、高度な無人化技術を武器に再起を狙っています。中長期的な視点では、省力化投資が再びこの地域を活性化させる鍵となるでしょう。

さらに、次世代通信規格「5G」や自動運転技術の進展により、半導体関連の需要に底入れの兆しが見え始めています。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの分析でも、悪化のピークは過ぎたとの見解が示されました。私は、この「半導体」こそが自動車と工作機械を再び結びつける救世主になると考えています。特定の産業に依存しすぎる構造から脱却し、デジタル技術を融合させた新たな産業の裾野を広げられるかどうかが、中部経済が再び「拡大」へと舵を切るための絶対条件です。

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