計測機器の世界的トップメーカーである堀場製作所は、2019年11月11日に2019年12月期の通期業績予想を下方修正すると発表しました。連結売上高は前期比2パーセント減の2070億円、営業利益は20パーセント減の230億円に着地する見込みです。同社にとって3期ぶりの減収減益という厳しい結果となります。このニュースは市場に驚きを与えたものの、その背景には明確な要因が存在している状況でしょう。
業績の足を引っ張っているのは、全体の売り上げの3割弱を占める半導体事業だと言えます。現在、半導体市場全体が在庫の調整局面に突入しており、製造装置向け部品の需要が一時的に低迷しているのです。その一方で、世界シェアの8割という圧倒的な強さを持つ排ガス測定装置などの自動車向け事業は、新興国からの受注を中心に非常に堅調な推移を見せています。
次世代自動車「CASE」領域での飛躍へ向けた布石
この明暗が分かれる環境下で、同社は100年に1度と言われる自動車業界の大変革に生き残りをかけて大胆な投資を行っています。そこで白羽の矢が立ったのが、次世代の自動車技術として注目を集める「CASE」という分野でした。CASEとは、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化の頭文字を取った言葉であり、今後のモビリティ社会の根幹を成す最重要トレンドと位置づけられています。
このCASE事業を将来の巨大な柱に育てるべく、堀場製作所は滋賀県大津市にて新たな試験施設「CELL0(セルゼロ)」を本格的に稼働させました。これは2015年に傘下に収めたイギリスのマイラ社が持つ高度な技術を国内で初めて導入した画期的な拠点となります。ここでは、電気自動車に欠かせないバッテリーの性能や耐久性はもちろん、エンジンやモーターなどあらゆるデータを測定可能です。
さらに、2020年にはイギリスにおいて自動運転に特化した新たな試験施設を開設する予定を立てています。この施設で重点的に取り組むのが、ハッキングなどの脅威からシステムを守るサイバーセキュリティーの安全性評価でしょう。自動車がインターネットに常時接続される未来において、デジタル空間の防犯対策は人命に直結する極めて重要な要素となるため、ソフトウェア開発の支援も手厚く行っていきます。
今回の発表について、SNS上では投資家や車好きから様々な意見が飛び交っている状況です。「一時的な減益は痛手だが、未来に向けた投資は不可欠」「大津の新施設が日本のEV開発を力強く後押ししてくれそう」といった、将来の成長を期待する前向きな声が多く見受けられました。一方で、「半導体市場の回復時期がいつになるか気になる」と、主力事業の動向を注視する冷静な投稿も散見されます。
私個人としては、今回の堀場製作所の決断を非常に高く評価したいと考えています。目先の利益変動にとらわれず、次世代モビリティ市場の覇権を握るために素早くリソースを集中させる姿勢は、日本の製造業全体が学ぶべきモデルケースではないでしょうか。2023年12月期にCASE関連の売上高を100億円規模にまで成長させるという野心的な目標に向かって、同社がどのような進化を遂げるのか本当に楽しみです。
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