日本の自動車産業を牽引するホンダが、大きな転換点を迎えています。2019年11月13日、ホンダは2020年3月期の四輪車における世界販売予想を497万5千台に引き下げると発表しました。これは2016年3月期以来、実に4年ぶりに大台である500万台を割り込む異例の事態です。SNS上でも「ホンダほどの企業が500万台を切るとは意外だ」「フィットの延期が響いているのか」といった、驚きと懸念の声が数多く寄せられています。
販売減少の主な要因は、日本国内や北米、アジアといった主要市場での苦戦にあります。国内では軽自動車「N-WGN」の生産停止や、看板車種である「フィット」の発売延期が影を落としています。北米でも消費者のセダン離れが進んでおり、主力工場の減産を余儀なくされるなど、かつての勢いにブレーキがかかっている状況です。世界的な競争が激化する中で、ホンダは今、自らの「存在価値」を改めて問われる厳しい局面に立たされていると言えるでしょう。
中国市場が示す圧倒的なポテンシャルと技術への信頼
しかし、この暗雲が漂う中で唯一の希望となっているのが中国市場です。米中貿易摩擦などの影響で現地の新車市場全体が冷え込む中、ホンダの販売台数は前年比18.7%増と驚異的な伸びを記録しました。倉石誠司副社長が「厳しい環境だからこそ、技術やブランドが選ばれる」と語る通り、ホンダが掲げる「ファン・テック」戦略が中国の消費者の心を強く捉えています。これは最新技術を楽しみながら提供するというホンダ独自のブランド戦略を指します。
特に注目すべきは、電動化への対応の速さです。ホンダは欧州や日本に先駆けて、2019年に中国で電気自動車(EV)を本格投入しました。さらに、ハイブリッド車(HV)の販売も絶好調です。HVとは、ガソリンエンジンと電気モーターという2つの動力源を効率よく使い分けて走る車のことで、環境性能と走りの楽しさを両立しています。口コミを重視する中国のユーザー層において、こうした実力派のモデルが高い支持を得ているのは、技術者集団としてのホンダの意地を感じさせます。
「CASE」時代を生き抜くための大胆な変革と提携戦略
現在、自動車業界は「CASE」と呼ばれる100年に一度の大変革期にあります。CASEとは、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった言葉で、これらすべての領域で巨額の開発投資が必要となります。年間販売台数が1000万台を超えるトヨタ自動車のような巨大資本と渡り合うためには、単独での戦いではなく、戦略的なパートナーシップが欠かせない要素となっています。
その布石として、ホンダは傘下の部品メーカー3社を日立製作所系の企業と統合させる決断を下しました。部品製造において「量」はコスト削減の生命線です。ホンダ以外のメーカーとも広く取引できる体制を整えることで、量産効果による競争力を高める狙いがあります。また、日立とは電動車向けモーターの共同出資会社も設立しており、2020年度には中国での現地生産も予定されています。このアライアンス(戦略的提携)の成否が、ホンダの将来を左右するはずです。
かつて掲げた「世界販売600万台」という数値目標を一旦降ろし、ホンダは今「質の追求」へと舵を切りました。個人的には、目先の数字に一喜一憂せず、ホンダらしい独創的な技術に磨きをかけるこの姿勢こそが、結果として再び世界を熱狂させる近道になると信じています。中国という巨大な「突破口」を足がかりに、ホンダが再び力強く加速する姿に期待しましょう。
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