映画は「情報社会」への処方箋になるか?2019年の日本映画界が放った強烈なメッセージと表現の自由

2019年12月12日、私たちはデジタル化の波に飲み込まれ、あらゆる感情がデータとして処理される時代を懸念しています。スマホの画面を眺めるだけでは決して得られない、現実の息遣いや質感こそが映画の醍醐味でしょう。本年は、そんな映画本来の「手触り」を再発見させてくれる名作が相次いで誕生しました。

塩田明彦監督の『さよならくちびる』や鈴木卓爾監督の『嵐電』を鑑賞すると、風にそよぐ木の葉や窓に映り込む影といった細部の豊かさに驚かされます。これらは単なる情報の断片ではなく、映画でしか描けない生々しい情緒を私たちに届けてくれました。SNS上でも「言葉にできない余韻がすごい」といった感動の声が数多く上がっています。

スポンサーリンク

同調圧力と表現の自由に揺れた1年

一方で、2019年は情報の拡散がもたらす「負の側面」が浮き彫りになった年でもありました。著名人の不祥事をきっかけに、映画の公開自粛や助成金の不交付といった事態が頻発したのです。特に『宮本から君へ』への助成金取り消しは、表現の自由を脅かす「公権力の介入」ではないかと、業界内外で激しい議論を巻き起こしました。

こうした「同調圧力」——周囲と同じ行動を強いる目に見えない空気感に対し、映画人たちは果敢に声を上げ始めています。KAWASAKIしんゆり映画祭での上映中止問題では、是枝裕和監督らが「映画祭の死」を懸念し抗議の意を表明しました。こうした信念ある行動が実を結び、最終的に上映が実現したことは、2019年の大きな転換点といえます。

興行収入は過去最高へ!映画が持つ底力

社会的な課題に直面しつつも、映画市場そのものは驚異的な活気を見せています。2019年1月から10月までの興収は前年を大幅に上回り、年間では過去最高の更新が確実視されています。新海誠監督の『天気の子』が140億円を突破したほか、ディズニー作品の圧倒的な集客力が市場を力強く牽引しました。

私は、現代人こそ映画館という暗闇に身を置くべきだと考えます。効率や最適化が求められる日常において、あえてノイズや不器用な感情に向き合う時間は、人間らしさを取り戻すための「抵抗」になるからです。かつての名女優、京マチ子さんが体現したような映画の普遍的な魅力は、令和の時代になっても決して色褪せることはないでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました