サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコが、歴史的な快挙を成し遂げました。2019年12月11日に地元サウジの証券取引所タダウルへ上場した同社は、翌12日の取引開始直後、株価が前日比で約10%も急騰しました。これにより、時価総額は一時2兆ドル(約220兆円)という驚異的な大台を突破しています。
この「2兆ドル」という数字は、サウジアラビアの実力者であるムハンマド皇太子が以前から掲げていた目標値でした。上場2日目にしてこの数値を達成したことは、皇太子のメンツを保つ結果となったと言えるでしょう。SNS上では「一国の企業がこれほどの価値を持つとは」「もはや異次元のスケールだ」といった驚きの声が相次いでいます。
なりふり構わぬ株価対策と「官製相場」の正体
しかし、この華々しい記録の裏側には、政府によるなりふり構わぬ下支えが存在しています。「官製相場」とは、政府が公的資金などを投入して意図的に株価を維持・形成することを指す専門用語です。今回、公開された株式のうち1割以上を政府系機関などが買い支えたとみられており、国家の威信をかけた演出の色合いが濃くなっています。
個人投資家に対しても、ユニークな優遇策が用意されました。一定期間株式を持ち続けた投資家に「ボーナス株」を付与する制度を導入し、売りを抑制したのです。こうした戦略によって「2兆ドル」の看板を守り抜いた形ですが、市場関係者からは「自由な価格形成が損なわれている」と危うさを指摘する声も少なくありません。
サウジ政府がこれほどまでに時価総額に固執するのは、今後の海外上場を見据えているからでしょう。2019年12月13日現在、政府はニューヨークやロンドン、そして東京などへの上場機会を伺っています。今回の実績を武器に海外投資家を誘致したい考えですが、強引な株価維持は、かえって透明性を重視する投資家から敬遠されるリスクも孕んでいます。
石油産業を取り巻く厳しい逆風と未来への課題
アラムコが直面しているのは、内部的な課題だけではありません。世界的に「ESG投資」の波が押し寄せていることも大きな懸念材料です。これは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視する投資手法のことで、気候変動への影響が懸念される石油セクターは、資金が抜けやすい傾向にあります。
実際に、米シェブロンが多額の減損処理を発表するなど、石油産業の先行きには不透明感が漂っています。現在の原油価格では利益が出せる構造であっても、環境意識の高まりや世界経済の減速、そして消費者の「石油離れ」が加速している現実は無視できません。中東の地政学リスクが皮肉にも価格を下支えしているという、歪な構造が続いています。
編集者の視点から見れば、今回の上場劇はサウジアラビアが石油依存からの脱却を急ぐあまり、無理なハードルを自らに課したようにも映ります。官製相場による「演出された熱狂」がいつまで続くのか、そして情報開示などの法的ハードルを越えて世界に認められる存在になれるのか。アラムコの真の試練は、これから始まると言えるでしょう。
コメント