2019年11月18日の米国株式市場は、投資家たちの熱気に包まれています。ニューヨークダウ工業株30種平均は、取引開始直後こそ売りが先行したものの、すぐに力強い反発を見せて連日の史上最高値を更新しました。米中貿易協議における関税撤廃への期待感や、製造業の景況感改善が追い風となり、市場はリスクを積極的に取る「リスクオン」の状態にあります。
しかし、このお祭り騒ぎの中で完全に「蚊帳の外」に置かれている存在があります。それが米国のエネルギー関連株です。SNS上でも「ハイテク株の独歩高に対して石油株の影が薄すぎる」といった声が上がっており、投資家の関心が旧来型のエネルギー産業から急速に離れている様子が浮き彫りになっています。
アラムコが米国でのロードショーを突如中止
この冷え込んだ視線を象徴するのが、世界最大の石油会社であるサウジアラムコの新規株式公開(IPO)を巡る動向です。2019年11月21日にニューヨークの高級ホテルで開催予定だった投資家向け説明会、いわゆる「ロードショー」が急遽中止されました。ロードショーとは、上場を前に企業の経営陣が機関投資家を訪ね、株式の購入を直接働きかける重要な宣伝活動のことです。
事前の個別ヒアリングにおいて、米国の主要な投資家から十分な需要が見込めないと判断されたことが中止の背景にあると推測されています。サウジアラムコは2019年12月にサウジアラビア国内での上場を控えており、想定時価総額は最大1兆7000億ドルに達する見込みです。これは世界最大の上場企業となる規模ですが、サウジ側が当初掲げた「2兆ドル」という目標には届かない見通しです。
「ESG投資」が変えるエネルギー株の評価基準
なぜ、これほどの実力を持つエネルギー株が不人気なのでしょうか。その背景には、昨今の投資トレンドである「ESG投資」の普及が深く関わっています。これは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の要素を重視する投資手法で、機関投資家はポートフォリオの「低炭素化」を急ピッチで進めています。
米最大手のエクソンモービルの株価が2014年の高値から3割も沈んでいる現状は、もはや原油価格の変動だけでは説明がつきません。私自身の見解としても、エネルギー産業は今、構造的な変革期にあると感じます。かつての「人口増=石油消費増」という右肩上がりの神話は崩れ去り、気候変動対策という新たな物差しが企業の価値を左右する時代になったのです。
サウジアラムコが目標を下げてまでIPOを急ぐ理由は、エネルギー株全体の評価が今後さらに切り下がる「座礁資産化」のリスクを危惧しているからに他なりません。今回のアラムコの苦戦は、単なる一企業の話題ではなく、化石燃料に依存したビジネスモデルが市場から突きつけられた厳しい「未来予報」であると言えるでしょう。
コメント