2019年映画興収が過去最高へ!戦時下の「娯楽の王様」から紐解く、私たちがスクリーンに熱狂する理由

映画界にとって、2019年は記録に残る輝かしい一年になりそうです。国内の興行収入が過去最高を更新する見通しとなり、劇場はかつてない活気に包まれています。興行収入とは、観客が支払った入場料の合計金額を指し、作品の人気を測る最も分かりやすい指標といえるでしょう。

この快挙を牽引したのは、新海誠監督の「天気の子」やディズニー実写版「アラジン」といった日米の話題作です。SNS上では「何度見ても泣ける」「劇場の迫力がすごい」といった称賛の声が溢れており、改めて映画というコンテンツが持つ圧倒的なパワーを実感せずにはいられません。

振り返れば、日本における映画の歴史は邦画と洋画の激しいデッドヒートの歴史でもありました。1990年代から2000年代半ばまではハリウッド映画を中心とした「洋画優勢」の時代が続きましたが、近年では日本アニメの躍進により「邦画優勢」の状況が定着しています。

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戦時下に消えた「アメリカの声」と淀川長治の記憶

しかし、こうした自由な競争が完全に途絶えた暗い時代が存在しました。映画評論家の淀川長治さんは自伝の中で、1941年12月08日の開戦を境に、愛する米国映画がスクリーンから消えてしまった悲しみを綴っています。前夜まで多くの観客が楽しんでいた日常は、戦争によって一変したのです。

戦時中、劇場で上映されるのは同盟国であるドイツやイタリアの数少ない作品に限られました。代わりにスクリーンを占拠したのは、敵国への憎悪を煽る勇ましいニュース映画だったといいます。自由な表現が許されない中、映画はプロパガンダ(特定の思想へ誘導する宣伝)の道具と化してしまいました。

終戦からしばらく経ったある日、淀川さんは街中で米兵たちの会話を耳にし、思わず外へ飛び出したそうです。それは3年半もの間、封印されていた「生の英語」との再会でした。彼にとってその声は、かつて映画館で夢中になった「トーキー(音声付き映画)」の懐かしさそのものだったのでしょう。

2019年12月14日現在、私たちは自分の好みに合わせて複数のスクリーンから作品を選べる幸福を享受しています。物語に没頭し、映像が動く面白さに心躍らせる時間は、決して当たり前のことではありません。平和な時代だからこそ味わえるこの感動を、私たちはもっと大切にすべきではないでしょうか。

映画が「庶民の娯楽の王様」として再び頂点に立った今、多様な価値観に触れられる喜びを噛み締めたいものです。単なる記録更新という数字以上の価値が、現在の映画館には満ち溢れています。戦争が奪った自由を二度と手放さないよう、文化の灯を守り続けたいと強く感じます。

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