ミュージカル界で飛ぶ鳥を落とす勢いの実力派、海宝直人さん。2019年も「アラジン」の主役や「レ・ミゼラブル」のマリウス役といった大役を次々と射止め、その圧倒的な歌唱力でファンを魅了し続けています。そんな彼が中心となり、2012年から密かに、かつ熱く活動を続けてきた3人組ロックバンド「シアノタイプ」が、ついに待望のファーストアルバム『モンタージュ』を2019年12月3日に発表しました。
SNS上では「舞台の海宝さんとは違う熱量に圧倒された」「ついに音源で聴けるなんて感涙」といった喜びの声が溢れ、大きな反響を呼んでいます。本作は、ライブ活動を通して磨き上げられた彼らの集大成といえるでしょう。ミュージカルの舞台で物語を背負う姿とは一味違う、アーティストとしての剥き出しの個性が、この一枚には凝縮されているのです。俳優としての枠を超えた、彼の「個」としての叫びに、多くのリスナーが耳を傾けています。
役ではなく「自分自身」を解釈する表現の深み
海宝さんは、ミュージカルの歌唱とロックでのボーカルには明確な違いがあると考えています。舞台では「アラジン」ならアラジンとして、その役柄に深く入り込み、キャラクターの視点で歌詞を解釈しなければなりません。役によって歌い方や息遣いまでもが変化するのが演劇の醍醐味です。しかし、バンドのステージに立つときは、あくまで「海宝直人」という一人の人間として楽曲に向き合い、自分自身を表現しているのだと力強く語ってくれました。
彼を支えるメンバーの小山将平さんも、その歌声を高く評価しています。特に、激しいテンポの楽曲であっても、語尾の一文字まで鮮明に聞き取れる「滑舌の良さ」は、舞台で培われた唯一無二の武器でしょう。歌詞の言葉ひとつひとつに命が宿り、聴き手の心に突き刺さるような明快さ。これこそが、他のロックバンドにはないシアノタイプの大きな個性となっており、彼らの音楽をより物語性の強いものへと昇華させているのです。
限界を突破する「演劇的」な楽曲制作の裏側
シアノタイプの音楽は、以前からファンの間で「演劇的」であると評されてきました。それは、作詞・作曲を担うベースの西間木陽さんが、海宝さんの持つ豊かな表現力を最大限に引き出す曲作りを徹底しているからです。今回収録された楽曲の中には、なんと息継ぎなしで21回も「生きて」という言葉を繰り返す、超絶技巧が要求されるナンバーも存在します。それを感情豊かに歌い上げてしまう彼のポテンシャルには、驚きを隠せません。
この挑戦的な試みは、海宝さんにとっても大きな刺激となっているようです。ライブで観客に歌を投げかけ、ダイレクトに感情が返ってくる経験は、俳優としての「表現の引き出し」を増やすことにも繋がると彼は確信しています。アルバム『モンタージュ』は、激しいロックから心揺さぶるバラードまで、まるで一本の良質な舞台を観ているかのようなドラマチックな展開が魅力です。彼らの冒険は、まだ始まったばかりと言えるでしょう。
編集者としての私見ですが、海宝さんが「自分自身」を表現する場としてバンドを選んだことは、ファンにとっても非常に幸福なことです。完璧に作り込まれた役柄の姿も美しいですが、シアノタイプで見せるような、生身の人間としての熱量や葛藤が透けて見える歌声こそ、今の時代に求められている「真実の表現」ではないでしょうか。舞台と音楽、その両輪が互いに高め合うことで、彼はさらなる高みへと昇り詰めていくはずです。
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