貴金属市場において、銀の価格がもどかしい動きを見せています。2019年に入り、金の価格上昇に連動する形で年初から1割ほど値を上げたものの、その後は勢いを欠き、現在は小幅な値動きに留まっているのです。ニューヨーク先物市場では、2019年12月03日時点で1トロイオンスあたり17ドル前後を推移しており、投資家の間では「もっと上がっても良いはずだ」という声が漏れています。
現在の市場を象徴するのが「金銀比価」という指標です。これは金価格を銀価格で割った数値で、金に対して銀がどれだけ割安かを示します。一般的に70倍を超えると銀が売られすぎと判断されますが、現在は86倍という高水準に達しており、金と比較した銀の割安感が非常に際立っています。SNS上でも「銀は今が仕込み時ではないか」といった強気な意見と、「上値が重すぎて手が出せない」という慎重論が火花を散らしています。
銀の需要の約6割は、半導体などの工業用が占めています。その中でも特に注目を集めているのが、クリーンエネルギーの主役である太陽光パネル向けです。富士経済の調査によると、2016年に2500トンだった需要は、2019年には3350トンにまで拡大する見込みです。世界的な脱炭素への流れを背景に、太陽光発電の導入コストが低下したことで、パネルの電極に使用される銀の必要性はかつてないほど高まっています。
過去最高の在庫が壁に?供給過剰のジレンマ
しかし、これほど強力な追い風が吹いているにもかかわらず、価格が跳ね上がらない背景には「在庫の壁」が存在します。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の指定倉庫には、2019年12月現在で約9800トンもの銀が積み上がっており、これは過去最高水準のボリュームです。上海の市場でも在庫増が続いており、市場関係者はこの膨大なストックを「需給の緩み」の象徴として冷ややかな目で見守っています。
なぜこれほど在庫が増えたのでしょうか。大きな要因の一つは、銀が他の金属を精錬する際の「副産物」として生産される点にあります。世界景気の拡大に伴い、銅や亜鉛などの非鉄金属の生産が増えたことで、意図せずとも銀の供給量も増えてしまったのです。ハイテク産業で使われる高純度の銀への引き合いは強い一方で、一般的な純度の銀が市場に溢れ、在庫として滞留しているのが実情です。
かつて2016年には、太陽光パネル需要の急増で「銀不足」が騒がれ、価格が20ドルを超えた局面もありました。当時は銀の使用量を減らす技術開発も進みましたが、導電性や耐久性の面から銀に代わる素材を見つけるのは至難の業です。私個人の見解としては、銀は現代のハイテク社会に不可欠な「戦略物資」としての側面を強めており、目先の在庫さえ整理されれば、再び脚光を浴びるポテンシャルは十分に秘めていると考えます。
米中貿易摩擦などの不透明な国際情勢もあり、一時的には需要減退が懸念された時期もありましたが、太陽光発電の導入ペースは依然として純増傾向にあります。2019年12月03日現在の状況を見る限り、銀相場が本格的な上昇トレンドに乗るためには、この過去最高水準の在庫をいかに解消していくかが最大の焦点となるでしょう。キラリと光る銀の輝きを取り戻すまでには、もう少し時間が必要なのかもしれません。
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