2019年12月に入り、為替市場では円安への期待が高まっています。米中貿易交渉の進展を背景に、10月以降はドルに対して円が売られる展開が続いてきました。しかし、日米の株価が歴史的な高値圏で推移している状況と比較すると、円安の歩みはどこか慎重です。この不思議な現象の裏側には、米連邦準備理事会(FRB)による「隠れた緩和策」が影響しているとの見方が強まっています。
2019年12月02日の東京外国為替市場では、円相場が一時1ドル=109円台後半まで下落し、約半年ぶりの安値を記録しました。それでも夕方の時点では109円60銭近辺にとどまり、株高の勢いに比べれば円安の進み方は限定的です。市場の専門家からは、本来であれば110円台に突入していても不思議ではないとの声が上がっており、現在の膠着状態が注目を集めています。
マーケットの混乱を鎮めるFRBの「資産拡大」戦略
円安の勢いを削いでいる正体は、FRBが2019年10月から開始した短期国債の買い入れ措置でしょう。これは、銀行間で資金を貸し借りする「短期金融市場」で金利が急騰したトラブルを防ぐための対策です。一時は10%近くまで跳ね上がった金利を安定させるため、FRBは市場に大量の資金を供給し、縮小させていたバランスシート(保有資産)を再び拡大させています。
ここで注目すべきは「量的緩和(QE)」との違いです。量的緩和とは、中央銀行が市場から国債などを大量に買い入れ、世の中に出回るお金の量を増やすことで景気を刺激する政策を指します。FRB側は「これはあくまで技術的な調整であり、金融緩和ではない」と強く否定していますが、投資家の間では「実質的には緩和と同じ効果を生んでいる」という見解が支配的になっています。
日米金利差の拡大を阻む「見えない圧力」
この国債買い入れは、結果として米国の長期金利を抑制する要因となっています。金利が下がれば、投資家にとってドルの魅力が薄れるため、ドル買いの動きにブレーキがかかるのです。この現象に対し、SNS上では「FRBがこっそりお金をばらまいている」「公式発表と実態が違うのではないか」といった、当局の姿勢に疑問を投げかける投資家たちの投稿が目立ち始めています。
私は、今回のFRBの動きは非常に巧妙な「綱渡り」だと感じます。景気を過熱させたくない一方で、市場の流動性不足を放置すれば金融システムが崩壊しかねないというジレンマが透けて見えるからです。この「隠れ緩和」とも呼べる状態が続く限り、日米の金利差が大きく開くことは難しく、輸出企業が期待するような劇的な円安シナリオは描きにくいのではないでしょうか。
2020年の半ばまで続くとされるこの措置は、日本銀行にとっても無視できない存在です。パウエル議長は追加利下げに慎重な構えを見せていますが、実質的な緩和が続くのであれば、円高への揺り戻しを警戒せざるを得ません。米中交渉や英国の政局など、外部環境が複雑に絡み合う中で、短期市場という「伏兵」の動向こそが、今後の為替トレンドを左右する決定打になりそうです。
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