2019年08月26日の東京株式市場は、海運業界にとって非常に厳しい一日となりました。川崎汽船の株価が一時、前週末と比べて5%も下落し、1032円という約6年9カ月ぶりの安値を記録したのです。投資家の間では衝撃が広がっており、SNS上でも「海運株が底なし沼に見える」「どこまで下がるのか不安」といった悲鳴に近い声が次々と投稿されています。この急落の背景には、深刻化する世界情勢と為替の変動が複雑に絡み合っていると考えられます。
大きな要因の一つは、前週末に激化したアメリカと中国による追加関税の応酬です。世界経済を牽引する二大国が互いに高い関税をかけ合うことで、物理的な荷物の動き、つまり「貿易」そのものが停滞してしまうという懸念が強まりました。海運業は世界中の荷物を運ぶことで利益を得るビジネスですから、貿易の停滞はまさに死活問題となります。こうした不透明な先行きを嫌気して、大口の資産を運用する機関投資家たちが一斉に売り注文を出したことが、今回の株価急落を招いたのでしょう。
「1円の円高で4億円の損失」川崎汽船を襲う為替の逆風
また、急速に進んだ円高も見逃せません。円相場が一時1ドル=105円を突破する水準まで円高に振れたことで、輸出関連銘柄には強い逆風が吹き荒れました。日本郵船や商船三井も2%安となるなか、川崎汽船の下落率が際立って大きかった点には注目すべきです。これは、同社が抱える為替感応度の高さ、つまり「円相場の変動が業績に与える影響の大きさ」が原因となっています。円高は海外で稼いだ外貨を日本円に換算した際の利益を大きく目減りさせてしまうのです。
実際に川崎汽船は、2020年03月期の業績予想において、為替レートを1ドル=109円と想定していました。しかし、現状はそれを大きく上回る円高が続いています。1円の円高が進むごとに年間で約4億円もの利益が吹き飛ぶ計算となり、今期の連結経常利益の見通しである50億円という数字を維持できるのか、市場は疑心暗鬼に陥っています。こうした「業績の下振れリスク」が、他の海運大手と比較しても同社の売りを加速させる要因となったのは間違いありません。
在庫余剰と運賃下落の懸念、それでも光る今後の反発期待
マーケットの専門家からは、北米向けの荷動きに対する警戒感も示されています。米国では昨年積み増した在庫が余っている状態にあり、新たな輸入需要が落ち込むのではないかと危惧されているのです。現に、北米向けの運賃は緩やかな下落基調にあり、これまでの強気な姿勢に陰りが見え始めています。ネット上の投資コミュニティでは「実体経済の悪化が数字で見えてきた」との指摘もあり、当面は慎重なスタンスを崩せない状況が続くことが予想されるでしょう。
しかし、絶望的なニュースばかりではありません。JPモルガン証券の姫野良太氏によれば、株価は当面軟調な推移が避けられないものの、7月から9月期の業績自体は市況の回復を受けて堅調になる見込みだといいます。新たな悪材料が出尽くせば、次の決算発表に向けて「売られすぎ」を是正する買い戻しの動きが入る可能性も十分にあります。今は荒波の中にいますが、海運業が世界経済のインフラであることに変わりはなく、冷静にリバウンドの機会を伺う時期に来ていると私は考えます。
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