世界44億人が「再分配」の網から漏れる危機?デジタルIDとデータが切り拓く格差是正の最前線

2019年12月18日、日本政府は13兆円規模という巨大な経済対策を打ち出しました。成長分野や防災に力点を置いたとされるこの施策ですが、果たして本当に「賢い支出(ワイズスペンディング)」と言い切れるのでしょうか。膨大な予算を投じる以上、国民が納得できるだけの具体的で科学的な根拠が求められています。

ここで注目したいのが、格差問題が深刻なアメリカ・ニューヨーク市の取り組みです。同市ではデータサイエンティストや経済学者からなる精鋭チームを市長直属に配置し、公的な補助金がどれほど貧困率を下げたかを厳密に数値化しています。まさに「印象論」を排し、データに基づいた「エビデンス(科学的根拠)」を政策の柱に据えているのです。

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デジタル経済が加速させる富の二極化

現代のデジタル化が進む経済構造では、データや革新的なアイデアを持つ一握りの層に富が集中しやすい傾向にあります。OECDの調査によれば、過去30年間で高所得層の実質所得が1.6倍に膨らむ一方、低所得層はわずか1.2倍の伸びに留まりました。工場労働のような中程度のスキルを必要とする仕事は、AIやITに取って代わられ、仕事の二極化が加速しています。

この状況に追い打ちをかけるのが、国境を越える巨大IT企業への課税ルールの遅れです。莫大な利益が適切な税として還元されないまま、世界の富の再分配機能が麻痺しつつあります。SNS上でも「働くほど格差を感じる」「富裕層ばかりが得をする仕組みを変えてほしい」といった、既存の社会保障制度への不信感が募っている様子が伺えます。

技術こそが格差を埋める「再分配の武器」になる

しかし、テクノロジーは決して格差を広げるだけの存在ではありません。例えばインドの個人識別番号「アドハー」は、顔認証などを通じて銀行口座を持てなかった層に金融サービスを届けました。身分証がないために社会の支援からこぼれ落ちていた世界44億人の人々に、デジタルの光を当てることで、きめ細かな支援を届けることが可能になるでしょう。

一方、日本の現状はどうでしょうか。2015年に導入されたマイナンバー制度ですが、カードの普及率はわずか14%に過ぎません。健康保険証としての利用さえ2021年を待つ状況であり、データを政策に生かす土壌はまだ整っていないと言わざるを得ないでしょう。プライバシーへの配慮は不可欠ですが、過剰な警戒心が社会の進化を阻んでいる側面もあります。

私は、日本こそ「論より証拠」の精神でデジタルIDを徹底活用すべきだと考えます。限られた財源を、本当に必要としている人へ届けるためには、データに基づいた税と社会保障の再構築が急務です。技術を「監視の道具」ではなく「公平な分配のためのインフラ」と捉え直す勇気が、令和の日本には必要ではないでしょうか。

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