お菓子売り場に並ぶ色とりどりのパッケージは、私たちの目を楽しませてくれます。しかし、国内チョコレートシェアで首位を走る明治は、あえて「種類を減らす」という大胆な決断を下しました。主力ブランドである「明治 ザ・チョコレート」のラインナップを、かつての10種類から厳選された6種類へと大幅に整理したのです。
2019年12月18日現在、食品業界では「選択と集中」が大きなテーマとなっています。これまでは季節限定品や派生商品を次々と投入して話題を作る手法が一般的でした。しかし、選択肢が多すぎると消費者がどれを選べばよいか迷ってしまう「決定回避の法則」が働き、結果としてブランドの希少価値を損ねてしまうという皮肉な事態を招いていたのです。
SNS上では、この刷新に対して「お気に入りの味がなくなるのは寂しい」という声がある一方で、「カカオ本来の味わいが分かりやすくなった」とポジティブに捉えるファンも目立ちます。もともと「ザ・チョコレート」は、2014年9月24日の発売以来、そのスタイリッシュな包装と本格的な味わいで、大人の女性を中心に一大ムーブメントを巻き起こしました。
高付加価値戦略への転換と体験型施設の展開
市場環境は決して楽観視できません。全日本菓子協会の発表によれば、2018年の国内チョコレート販売額は前年比2.4%減の5370億円となり、9年ぶりに減少へと転じました。健康志向による大人需要が市場を牽引してきましたが、少子高齢化という構造的な課題が定番商品の足を引っ張る形となっています。
こうした逆風の中、明治は「量より質」を重視する方針を明確にしました。産地ごとに異なるカカオの香りを引き出すため、あえてゆずやジャスミンといったフレーバー展開を抑え、カカオ豆そのもののポテンシャルで勝負します。これは、単なるコスト削減ではなく、ブランドのアイデンティティを深掘りするための攻めの姿勢といえるでしょう。
さらに、顧客との接点を増やす取り組みも加速させています。東京・中央区にオープンした「ハローチョコレート バイ メイジ」では、カカオ豆農園をVRで体験できるなど、消費者がチョコレートの背景にあるストーリーを学べる場を提供しています。モノを売るだけでなく、その背景にある「体験」を売る戦略は、現代の消費動向に合致しています。
こうした動きは明治だけにとどまりません。森永製菓が長年愛された「チョコフレーク」の生産を2019年6月に終了させるなど、大手メーカー各社は不採算商品を整理し、強みのあるブランドへ資源を集中させています。情報過多の時代だからこそ、本質的な価値を持つ「本物」だけが生き残る時代へと突入したのかもしれません。
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