日本のエネルギー市場に、新たな変化の兆しが見え始めています。東京電力エナジーパートナー傘下の新電力会社である「PinT(ピント)」が、2019年12月10日までに地方開拓を狙った画期的な営業戦略を打ち出しました。その秘策とは、各地の家庭に深く根付いている液化石油ガス(LPG)事業者への営業委託です。都市部で激化するシェア争いを飛び出し、ついに地方への本格的な進出が始まろうとしています。
SNS上では「東電系のサービスが地方でも使いやすくなるのは驚き」「ガス屋さんが電気も売る時代なんだ」といった、期待と驚きの声が広がっているようです。PinTは2019年11月から岡山県などの事業者を皮切りに、順次代理店契約を締結し始めました。12月上旬の時点で提携先は5社に到達しており、年度内には10社以上に拡大させる意気込みを見せています。地元で信頼の厚いガス会社のネットワークは、新電力にとって最大の武器となるでしょう。
地域密着の強みを生かす!ガスボンベが結ぶ電力の絆
今回の戦略の肝は、LPガス特有の接点にあります。LPガスとは、主にプロパンやブタンを主成分とした燃料で、都市ガスのインフラが整っていない地域でもボンベを設置することで利用できる便利なエネルギーです。このガスボンベの交換作業や定期点検の際、なじみの担当者が電気の料金プランを丁寧に解説することで、消費者側も安心して契約の切り替えを検討できるという仕組みになっています。
私はこの戦略を、非常に理にかなった賢明な判断だと評価しています。新電力が地方で直面する最大の壁は「知名度の低さ」ですが、地域のインフラを長年支えてきたLPG事業者と手を組むことで、そのハードルを一気に解消できるからです。単なる価格競争ではなく、信頼を基盤にした営業は、高齢化が進む地方都市において特に高い効果を発揮するはずです。初年度に1万件の顧客獲得を目指すという目標も、現実味を帯びて感じられます。
また、提携するLPG事業者側にとっても、この話は渡りに船と言えるでしょう。少子高齢化や過疎化の影響により、家庭向けのガス販売量は過去10年で2割も減少しており、経営の多角化が急務となっていました。東電系の強力な商材をラインナップに加えることで、手軽に事業の幅を広げられるメリットは計り知れません。双方にとって「ウィン・ウィン」の関係が、縮小するエネルギー市場を生き抜く鍵となるでしょう。
収益改善へのラストリゾート!150万件への挑戦
親会社である東京電力エナジーパートナーも、安穏としてはいられない状況にあります。2019年3月期の決算では、競争激化によって経常利益が前の期から約37%も減少する厳しい現実に直面しました。PinTは2020年度までに顧客獲得件数を150万件にまで引き上げる壮大な目標を掲げていますが、2019年8月末時点では28万件に留まっています。この大きなギャップを埋めるためには、地方市場という広大な未開拓地の攻略が不可欠です。
日本国内でLPガスを利用する世帯は約2400万件にものぼり、これは都市ガス利用世帯に匹敵する巨大な市場です。大手電力系が家庭向け電力でここまで積極的にLPG事業者と組む例は珍しく、PinTの挑戦は業界全体の試金石となるかもしれません。通信サービスとのセット販売なども含め、いかにして消費者のライフスタイルに溶け込めるかが今後の勝敗を分けるでしょう。新たなエネルギーの選択肢が、日本の隅々にまで届く日が楽しみですね。
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