私たちの生活を劇的に変える電気自動車(EV)や次世代通信規格「5G」の普及には、実は「熱」という大きな壁が立ちはだかっています。2019年12月19日、三菱マテリアルはこの課題を打破する画期的な絶縁基板「DBAC基板」の開発を発表しました。
この新技術は、半導体から発生する熱を従来よりも約2割効率的に逃がすことができる優れものです。ネット上でも「日本の素材メーカーの底力を見た」「5Gの熱暴走対策に期待大」といった、日本の技術力を称賛する声が数多く寄せられ、大きな注目を集めています。
異素材を操る「原子レベル」の魔法
そもそも「絶縁基板」とは、電気を通さない絶縁性と、熱を逃がす放熱性を両立させ、精密な半導体を支える土台のような役割を果たす部材です。従来の製品では、セラミックスの土台に、熱を伝えるための銅を直接貼り合わせるのが一般的でした。
しかし、温度変化によって素材が伸び縮みする際、硬いセラミックスと銅の間に隙間ができてしまい、冷却性能が落ちるという悩ましい弱点があったのです。そこで三菱マテリアルは、両者の間に「アルミニウム」を挟み込むという、独自の三層構造を考案しました。
柔らかい性質を持つアルミをクッション材として機能させることで、土台の割れを防ぎつつ、異なる素材同士を強力に接着することに成功しています。同社が誇る「原子レベルの解析技術」によって、剥がれにくい強固な接合が実現したことは驚くべき成果でしょう。
世界初!2ミリ厚の銅が実現する驚異の放熱性能
今回のDBAC基板において最も衝撃的なのは、接合された銅の厚みが従来の約7倍となる「2ミリメートル」に達している点です。これほどの厚みを持つ銅を絶縁基板に採用したのは世界で初めての試みであり、熱を素早く拡散させる能力が飛躍的に向上しました。
三菱マテリアルは2018年に事業部を統合し、銅・アルミ・電子材料の知見を一つに集約したことで、この相乗効果を生み出したといいます。不純物が極めて少ない「無酸素銅」を自社で製造できる強みも、この複雑な接合技術を支える重要なピースとなっているのです。
個人的な見解を述べれば、こうした「地味に見えるけれど不可欠な素材技術」こそが、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)時代における日本企業の真の競争力になると確信しています。2年後の量産化が今から待ち遠しくてなりません。
2018年からはすでにサンプル出荷が開始されており、同社は2年後の売上高100億円を目標に掲げています。5Gの超高速通信やEVの長距離走行を陰で支えるこの新技術は、間違いなく次世代インフラの守護神となるはずです。
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