日本のファッションシーンを長年支えてきた百貨店アパレル大手が、今、大きな転換期を迎えています。オンワードホールディングスやレナウンといった老舗企業が、これまでの百貨店中心のビジネスモデルから一歩踏み出し、インターネット通販に特化した新ブランドを次々と立ち上げているのです。SNSでは「あの憧れの品質がこの価格で?」と、感度の高い30代の働く女性たちを中心に早くも期待の声が広がっています。
オンワードホールディングスは、2020年02月にネット専業ブランド「アンクレイヴ(uncrave)」を始動させます。このブランドが提案するのは、忙しい毎日を彩る「セットアップ」を軸とした時短コーディネートです。実店舗を持たないことでコストを大幅に削減し、コートが25,000円前後、ニットが9,800円前後という、従来の百貨店ブランドでは考えられなかった驚きのプライスを実現しました。
公式通販サイトのみでの展開となるアンクレイヴは、人気モデルの起用やSNSでの戦略的な発信により、ブランド認知を一気に高める計画です。同社の分析によれば、既存の百貨店ブランドの主要顧客層は45歳から50歳が中心ですが、新ブランドでは30代から40代前半の「働く世代」をターゲットに据えています。オンラインに特化することで、仕事や育児に忙しく、なかなか店舗へ足を運べない層の心を見事に掴もうとしています。
インフルエンサー活用と「ネットで見える品質」が成功の鍵
一方、レナウンが展開する「エンスウィート ルミエール」も、30代の働く女性に向けたネット発ブランドとして注目を集めています。同社はインスタグラムで影響力を持つインフルエンサーによる着こなし提案を積極的に行っています。単なる宣伝ではなく、消費者に近い視点での発信が、購買意欲を刺激しています。SNS上では「洗濯機で洗えるのが嬉しい」「アイロン不要で助かる」といった、実用性を重視するユーザーの投稿が目立ちます。
ネット通販では直接生地に触れられないため、レナウンは「機能の可視化」にも注力しています。手洗いの可否やアイロンがけのしやすさを独自のアイコンで表示し、ブラウスが4,500円から5,500円程度という手頃な価格帯で提供します。店舗運営にかかる経費を半分以下に抑えることで、高品質な素材を維持しつつ価格を抑える「D2C(Direct to Consumer)」の強みを最大限に活かし、2024年には売上高10億円を目指す強気な姿勢です。
こうした動きは、単なるトレンドではなく生き残りをかけた戦略といえるでしょう。三陽商会の「エス エッセンシャルズ」は、2015年の開始以来ネットで人気を博し、すでに実店舗を3店構えるまでに成長しました。2019年09月にはインスタグラムの「ストーリーズ」を活用した動画販売を開始し、2019年10月の売上高は前年同月の3倍を記録したといいます。もはやネットは「店舗の代わり」ではなく、爆発的な成長を生む主戦場なのです。
百貨店依存からの脱却とアパレル業界の未来予想図
百貨店での衣料品売上高は、2018年時点で1兆7,725億円と、2000年に比べて約半分まで落ち込んでいます。若者の百貨店離れと価格競争の激化により、かつての「百貨店とアパレルメーカーの二人三脚」は限界を迎えています。オンワードホールディングスが国内外の600店舗を閉鎖する決断を下したことは、この構造改革の本気度を物語っています。長年培われた「品質への信頼」をネットという新しい器にどう移し替えるかが問われています。
個人的な見解として、この変革は消費者にとって大きなメリットがあると感じます。百貨店クオリティの服が、中間マージンや店舗維持費を削ることで、ユニクロ以上・百貨店未満の「絶妙な価格帯」で手に入るようになるからです。デジタルネイティブな30代にとって、ブランドの歴史よりも「スマホで買えて、自分に似合い、機能的であること」が重要です。老舗アパレルの「目利き力」と「IT戦略」が融合したとき、日本のファッションはより面白くなるでしょう。
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