2019年日本経済の病。「低価格・高品質」の呪縛が生む「デフレ」と「ストレス」の二重スパイラルとは?

2019年5月28日、エコノミストの馬渕治好氏が、現代の日本企業が陥っている深刻な「2つの悪循環」について警鐘を鳴らすコラムを発表しました。それは、本来両立が難しいはずの「低価格」と「高品質」を無理に維持しようとすることで、そのシワ寄せが全て従業員に押し付けられているという指摘です。この記事に対し、SNSでは「まさに今の日本の職場そのもの」「現場は疲弊しきっている」「安くて良いものが当たり前だと思いすぎている」など、多くの共感と悲鳴にも似た声が上がっています。

1つ目の悪循環は、「デフレ・スパイラル(物価下落と景気後退の連鎖)」に近い状態です。コラムによれば、日本企業は画期的な新商品を生み出す力が弱まり、従来品に頼る傾向が強まっています。すると他社との違いを打ち出せず、結局は「価格競争」に陥ってしまいます。その値下げの原資は、従業員の「賃金抑制」によって賄われがちです。しかし、労働者は同時に「消費者」でもあります。給料が上がらなければ購買力は伸び悩み、企業はますます商品を値上げできなくなるという、負の連鎖です。

そして2つ目が、さらに深刻な「ストレス・スパイラル」です。価格で勝負できない企業は、日本の得意分野である「質の高いサービス」で差別化を図ろうとします。時間の正確な配送、丁寧すぎる接客、充実したアフターサービスなどがそれです。しかし問題は、その高品質を維持するためのコストを払わず、従業員の「誠意」や精神論、いわゆる「やりがい搾取」に過度に依存している点にあると指摘されています。

この「やりがい搾取」がまん延し職場がストレスで満ちると、かえってチェックミスや「コンプライアンス違反(法令違反)」、さらには「バイトテロ」と呼ばれる不祥事の遠因となり、品質そのものを損なう危険さえはらんでいます。さらに恐ろしいのは、ストレスを溜めた労働者が「消費者(お客様)」として店に立った時、他社の従業員にそのストレスをぶつけてしまうことです。そのクレームを受けた企業がまた「現場で何とかしろ」と従業員に丸投げし、社会全体のストレスが強まっていくという悪夢のような循環です。

馬渕氏は、これら2つのスパイラルの根本原因は、「安いのに高品質」というミスマッチの「つけ」を全て従業員に押し付けていることだと断じています。この呪縛を断ち切るには、企業が魅力的な新商品・サービスを開発し、それにふさわしい「適切な高価格」で販売する勇気が必要です。そして得られた利益で従業員の待遇を手厚くすること。あるいは、「急ぎでない配送」にポイントを還元するサービスのように、「過剰品質」そのものを見直すことも、社会のストレスを緩和する重要な一手となるでしょう。

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