2019年12月25日現在、日本の超高齢社会は新たな局面を迎えています。あと5年もすれば、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年問題が到来します。人口の約3割をシニアが占めるという未曾有の事態を前に、電通シニアプロジェクト代表の斉藤徹氏は、持続可能なビジネス視点の重要性を説いています。
2019年10月の推計で、65歳以上の人口割合は28%を超えました。彼らは現役世代と比較して資産に余裕がある一方、人生100年時代を見据えた老後への不安も抱えています。斉藤氏は著書の中で、高齢者が直面する「困りごと」を解消するだけでなく、そこに「喜び」という付加価値を添えることこそが、シニアの財布を開く鍵であると指摘しました。
SNS上でも「親の世代が何を求めているのか、ようやくヒントが見えた気がする」といった声や、「ただの介護サービスではない、ワクワクする仕組みが必要だ」という共感のコメントが広がっています。単なる課題解決は義務に感じられがちですが、心が動くエンターテインメント性が加わることで、消費行動は劇的に変化するのでしょう。
歌声と一体感で心を癒やす「参加型エンタメ」の魔力
節約ばかりの毎日は、誰にとっても味気ないものです。そんな日常を彩る事例として注目なのが、マイソングエンタテイメントが手がける「歌声コンサート」です。これは、かつて流行した「歌声喫茶」を現代風にアレンジしたイベントで、2時間1500円ほどの手軽な価格設定が、多くの60代から70代を虜にしています。
コンサートでは、スクリーンに映し出された歌詞を見ながら、300人規模の観客が一体となって名曲を合唱します。研ナオコさんのバックバンド経験を持つ杉山公章氏の絶妙なトークは、まるで人気漫談家のようなユーモアに溢れ、会場を熱狂の渦に巻き込みます。これこそが、単なる音楽鑑賞を超えた「一体感」という喜びの提供です。
私は、この「自分も主役になれる」という感覚こそ、孤独を感じやすいシニア世代への最高の処方箋だと考えます。自分たちの青春時代を共有し、大きな声で歌うことは、健康寿命の延伸にも寄与する素晴らしいビジネスモデルではないでしょうか。2020年の春には九州上陸も予定されており、その勢いは全国へと広がっています。
「自分史」を身近にする親子の絆ビジネス
次なるキーワードは「承認欲求」と「家族の絆」です。株式会社こころみが提供する「親の雑誌」は、重厚な自叙伝のハードルを下げ、写真豊富な雑誌形式で人生をまとめるサービスです。もともと見守り電話サービスから派生したこの事業は、親が自分の人生を誰かに伝えたいという切実な願いを見事に形にしています。
「自分史」とは、個人の歴史を書き記すことですが、本を一冊書き上げるのは容易ではありません。しかし、インタビューに応じるだけで本格的な雑誌が完成する仕組みは、家族間のコミュニケーションを再燃させる装置となります。15万円からの価格設定ながら、子供や孫世代にとってもかけがえのない宝物になるため、贈答用としての需要も高いようです。
シニアビジネスにおいて、当事者だけでなくその家族を巻き込む視点は非常に鋭いと感じます。親の生きた証を残したいという子世代の願いと、認められたい親世代の欲求を繋ぐこのサービスは、デジタル化が進む現代だからこそ、手に取れる「紙媒体」の温もりが価値を増しているといえるでしょう。
働く喜びが地域を救う「シニア戦力化」の未来
最後に紹介するのは、北海道池田町の「いきがい焼き」です。1970年代から続くこの取り組みは、高齢者が陶器を作り、それを販売して対価を得るという「就労を通じたやりがい」を提供しています。ここでのポイントは、ただの趣味ではなく、実際に売ることで「社会の役に立っている」と実感できる点にあります。
今後、定年延長が一般的になる中で、元気なシニアをいかに戦力として活用できるかが企業の存続を左右します。斉藤氏が指摘するように、シニアのニーズを最も理解しているのはシニア自身です。彼らを単なる「支援対象」として見るのではなく、プロフェッショナルな「パートナー」として迎え入れる意識改革が求められています。
私は、働くことが最大の老化防止であり、地域活性化の特効薬であると確信しています。人生の後半戦をいかに「喜び」に満ちたものにするか。企業側が彼らの知恵や活力を引き出す仕組みを整えることこそ、2025年問題を乗り越え、新しい日本の形を築くための第一歩となるに違いありません。
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