2019年03月09日、穏やかな日本海を突き進む佐渡汽船の高速船「ぎんが」を突如として衝撃が襲いました。新潟港から佐渡の両津港へと向かっていた同船が、航行中に正体不明の物体と激しく衝突し、乗客85人が負傷するという痛ましい事故が発生したのです。衝撃の強さを物語るニュース映像は当時、日本中に大きな衝撃を与え、海の安全に対する懸念が急速に高まりました。
事故発生から月日が経過した2019年12月14日、佐渡海上保安署はこの一件に関する重要な捜査結果を発表しています。当時操縦していた41歳の船長および54歳の運航管理責任者の両名について、業務上過失致死傷の疑いで調査が進められてきました。しかし、最終的に「業務上の過失は認められない」との判断が下され、新潟地方検察庁へ書類が送付されることになったのです。
海上保安署の判断の決め手となったのは、当時の航行状況において衝突を回避することが物理的に困難だったという点にあります。そもそも、今回事故を起こした「ぎんが」は、ジェットフォイルと呼ばれる非常に特殊な船体です。これは、ガスタービンエンジンで駆動するウォータージェット推進により、船体を海面上に完全に浮上させて時速約80キロメートルという超高速で航行するハイテクな船を指します。
海洋生物との衝突リスクと、ネット上で広がる現場への同情
ジェットフォイルは「海の飛行機」とも呼ばれますが、そのスピードゆえに、浮遊物やクジラなどの海洋生物を瞬時に目視で確認し、回避の動作を間に合わせることは至難の業です。捜査当局も、当時の視界や機器の作動状況を精査した結果、乗組員が注意義務を怠ったとは断定できないという結論に至ったのでしょう。予期せぬアクシデントに対して、個人の責任を問うことの限界を示した形となりました。
このニュースが報じられると、SNS上では「船長を責めるのは酷だと思っていたので安心した」「クジラ相手ではどうしようもない」といった、現場の苦労を察する声が多く上がっています。一方で、80人以上が怪我を負ったという事実を重く受け止め、「ハード面での対策を急いでほしい」という切実な意見も散見されました。利用者の安心を守るためには、個人の裁量を超えた技術的サポートが不可欠です。
私は今回の判断について、妥当であると同時に、海運業界への大きな宿題が残されたと感じています。過失がないからといって事故を「不運」で片付けるのではなく、赤外線カメラの精度向上や、水中スピーカーによる生物への警告など、悲劇を繰り返さないための投資が今後さらに求められるはずです。空の安全が厳しい基準で守られているように、海の高速交通網もまた、新たなフェーズへ進化すべき時が来ています。
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