コンピューターの進化が、いま決定的な転換点を迎えています。これまで半導体の性能向上を支えてきた「ムーアの法則」が限界に達しつつある中で、業界はかつてない熱気に包まれているのです。国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、この現状を「ポストムーア時代の進化爆発」と形容されました。それはまるで、多種多様な生命が一気に誕生したカンブリア紀を彷彿とさせる、計算機の新たな可能性が芽吹く瞬間にほかなりません。
この劇的な変化の主役となるのが、急速に普及する人工知能、すなわちAIです。これからの時代はAIの高度な情報処理に特化した、専用の半導体チップ開発がさらに加速していくでしょう。東京工業大学の本村真人教授は、人間が大まかな方針を決定し、細かな機能の実装はAIに任せるという未来像を提示されています。特に膨大な選択肢から最適解を導き出す「最適化問題」を、低消費電力かつ超高速で処理する技術は、次世代インフラの要となります。
二次元から三次元へ!積層技術が切り拓くナノ宇宙
平面的な集積化に頼ってきた従来のシリコンウエハーは、立体的につみ重ねる「3次元積層」へと進化の舵を切っています。回路を小さくすれば消費電力が抑えられるという原理は、垂直方向への集積でも変わりません。東京工業大学の大場隆之特任教授が進める研究では、ウエハーを光が透き通るほど極限まで薄くし、幾層にも重ねる驚異的な技術が開発されています。配線を短縮することで、大容量のデータを瞬時に、かつ省エネで伝送できるのです。
こうしたハードウェアの小型化と通信技術が融合した先には、胸躍る未来が待っていることでしょう。大場特任教授によれば、2040年1月1日を過ぎた頃には、昆虫サイズの微小なロボットが自律的に動き回る世界が現実味を帯びてきます。また、NTTが取り組む「光」を用いた処理技術も見逃せません。情報を電気に変えず、光のままチップ内で処理するナノサイズの素子が実現すれば、情報処理の遅延は極限までゼロに近づいていくはずです。
通信革命が変えるコンピューターの「場所」
計算機の進化とともに、ネットワークの概念も根底から覆されようとしています。東京大学の越塚登教授が指摘するように、通信速度が圧倒的に向上すれば、もはや計算を行う場所はどこであっても支障ありません。巨大なデータセンターに依存するのではなく、中規模の拠点が各地に分散し、街全体が巨大なコンピューターのように機能する社会が訪れるでしょう。通信と計算のバランスが最適化されることで、人知を超えたスピードの制御が可能になります。
編集部としては、この「ポストムーア時代」こそが、日本の技術力が再び世界をリードする好機であると確信しています。SNS上でも「昆虫ロボットが災害救助で活躍するかも」「光コンピューティングの省エネ性能に期待」といった、技術革新へのポジティブな声が数多く上がっています。2020年1月1日現在のこの熱狂が、20年後の私たちの生活をどれほど豊かにしてくれるのか、その進化の鼓動を今後も追い続けていきたいと考えています。
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