1回1億円超えの衝撃!遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」がもたらす医療保険制度の未来と課題

医療の進歩はついにここまで来たのでしょうか。1回使用するだけで数千万円を要する超高額な医薬品が世間の注目を集める中、2020年以降はついに1億円を突破する超ハイテク新薬が登場する見通しとなりました。その筆頭が、ノバルティス社が開発した遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」です。この驚天動地の価格設定に対し、SNSなどでは「命に値段はつけられないが、高額すぎる」「保険制度がパンクしてしまうのではないか」といった、驚きと不安の入り混じった声が多数上がっています。

ゾルゲンスマは、早ければ2020年2月に販売が認められ、同年5月以降に公的医療保険の対象となる見込みです。すでに先行販売されている米国での価格は2億円を超えており、日本でも公定価格である「薬価(国が定める医療用医薬品の価格)」は1億円以上になると予想されています。対象となるのは、筋肉が徐々に衰えていく遺伝性の難病「脊髄性筋萎縮症」を患う乳幼児です。重症化すると呼吸不全に陥り、命を落とす危険性も高い重病ですが、わずか1回の注射で劇的な治療効果が期待できるとされています。

また、タカラバイオが大塚製薬と共同開発を進めているがん治療薬も、薬価が1千万円以上になると目されており、早ければ2020年度中に承認される見通しです。これは、関節の付近に悪性腫瘍ができる「滑膜肉腫」という、若年層に多い病気を対象としています。患者自身の体内から「リンパ球(免疫を司る白血球の一種)」を取り出し、がん細胞を識別して攻撃する能力を遺伝子操作で強化した上で再び体内に戻すという、非常に高度なアプローチを採用しています。

さらに、セルジーン社も血液がんの一種である「リンパ腫」の治療薬を開発中で、こちらも2020年度内に承認へ至る可能性があります。これらの超高額薬に共通しているのは、いずれも患者数が非常に少ない「希少疾患」をターゲットにしている点です。他社が真似できない画期的な薬の開発は莫大な利益を生むため、世界に約7千存在する難病の治療薬開発に舵を切る製薬企業が急増しています。各国による審査の優遇措置や、遺伝子を体内に取り込む最先端技術の普及がこの流れを後押ししています。

それにしても、なぜこれほどまでに高価格なのでしょうか。ゾルゲンスマの米国の価格は、従来の長期治療に必要だった医療費(約4億円)をベースに算出されています。一瞬で治療が完了する利便性を考えれば妥当という見方もありますが、個人の細胞を預かって個別に加工する「オーダーメイド型」の医薬品は大量生産ができないため、どうしてもコストが跳ね上がってしまいます。一方で、これらの新薬によって結果的に生涯の総医療費が抑えられるケースがあることも事実です。

幸いなことに、日本には患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」が存在します。そのため、どれほど高額な薬であっても、窓口での支払いは原則の3割負担よりはるかに安く済みます。例えば、3千万円を超える白血病治療薬「キムリア」を使用した場合でも、年収約500万円の世帯であれば1回あたりの負担は40万円程度に抑えられます。患者にとっては命を救う素晴らしい制度ですが、裏を返せば、残りの莫大な費用の大半は私たちの保険料や税金で賄われているのです。

キムリアの国内市場規模は最大で年間72億円と試算されており、年間10兆円にのぼる日本の薬剤費全体から見れば現時点ではごく一部に過ぎません。しかし、こうした1億円超えのハイテク新薬が次々と登場してくれば、現在の医療保険財政の基盤が揺るぎかねないという懸念は現実味を帯びてきます。厚生労働省は薬価を引き下げる制度改正を重ねていますが、あまりに価格を抑え込みすぎると、海外の製薬企業が革新的な新薬を日本市場に投入してくれなくなるという、恐ろしい弊害も予測されます。

日本の公的医療保険は、風邪薬や湿布といった市販薬で代用できる軽微な症状まで幅広くカバーしています。命に関わる超高額薬を守るためには、こうした身近な医療への保険適用の「線引き」を厳しく見直す時期に差し掛かっているのではないでしょうか。医療のイノベーションを絶やさず、同時に誰もが安心して最先端の治療を受けられる社会を維持するために、私たちは医療制度のあり方について、今こそ真剣に議論を深めていくべきだと強く感じます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました