高級スポーツカーブランドとして世界的な知名度を誇るポルシェが、今、日本のマーケットで目覚ましい躍進を遂げています。国内での販売台数は過去10年間でほぼ倍増という快進撃を続けており、その勢いをさらに加速させるため、新たな顧客層へのアプローチを積極的に展開しています。これまでの熱心なポルシェファンである富裕層に加え、特に将来の消費を牽引すると期待されるミレニアル世代の取り込みを重要視していることが、ポルシェジャパンの七五三木敏幸社長への取材で明らかになりました。
ミレニアル世代が重視するのは、モノの所有ではなく感動的な体験です。彼らは体験したことをソーシャルメディア(SNS)ですぐに共有し、コミュニティで楽しむという特徴を持っています。ポルシェは、こうした新しい価値観を持つ若者たちにアピールするため、2019年11月に東京・渋谷で「スコープス」という体験型イベントを開催する予定です。まずポルシェというブランドに気軽に「触れてもらう」ことが、新規顧客開拓の第一歩だと七五三木社長は強調されています。一方、経営資源を戦略に合致した顧客層へのアピールに集中させるため、2019年の東京モーターショーへの出展は見送るとのことです。
この**「体験重視」の戦略を象徴するのが、2021年に千葉県木更津市にオープン予定のドライビング体験施設です。これは単なるサーキットではなく、オーナーが安全に高度な運転技術を習得することを目的としています。この施設には、世界で最も過酷なサーキットの一つとして知られるドイツのニュルブルクリンクをモデルにした「カルーセル」という名物コーナーが設けられます。ここでは、急カーブで車が横滑りする挙動をコントロールする体験ができ、ミレニアル世代の感動体験へのニーズを満たす、まさしくポルシェならではの施設となるでしょう。日本は、世界で8番目にこの種の施設がオープンする予定です。
また、自動車業界全体で「所有」から「利用」へという大きな流れが加速し、輸入車メーカーでもシェアリングサービスが広がりつつあります。ポルシェは、具体的なサービス導入についてはまだ公表できる段階ではないとしつつも、将来的にカーシェアリングを視野に入れていると明かしています。完成車を輸入して販売するという従来のビジネスモデルに加えて、それ以外の新たな領域にも積極的に挑戦していくという強い使命感があるそうです。
ポルシェの順調な販売実績は素晴らしいものですが、高価格帯のセグメントでは競合メーカーとの競争が激しく、現在のシェアは決して安泰ではありません。七五三木社長は、いたずらに販売台数を追うのではなく、「既存の顧客にずっとポルシェに乗り続けてもらうこと」**が最重要であるとされています。その結果として、毎年着実に成長し、安定した台数を納車することが目標だと述べられており、顧客との長期的な関係性を重視する姿勢に、私はポルシェのブランド力の根幹を見ました。
ブランドの未来を担う電動スポーツカー「タイカン」
ポルシェは、ブランドの未来を担う新型車の投入も準備しています。その筆頭が、ポルシェ初の電動自動車(EV)となる「タイカン」です。2020年の日本導入に向けて、2019年9月にワールドプレミア(世界初公開)が予定されています。このタイカンは、従来の電動スポーツカーの弱点をすべて克服した、「いっさいの妥協がない」完成度の高い車だと七五三木社長は自信を示されています。一般的なEVでは、電気モーターやバッテリーが過熱すると出力が低下してしまう欠点がありますが、タイカンはそれをクリアしています。
具体的には、停止状態から時速100キロメートルまでの加速がわずか3秒で完了する性能を、一般的なEVが1回達成すると一時的に性能が落ちるところを、タイカンは10回連続で達成できるという驚異的な性能を実現しています。これは、技術的なこだわりと徹底的な設計の賜物と言えるでしょう。日本市場への導入においては、スイスのABB社と提携し、日本発の急速充電規格である「チャデモ(CHAdeMO)」方式の充電設備を搭載した日本専用車として投入されます。これは、日本のEVインフラへの適合を真剣に考えた結果であり、タイカンが電動スポーツカーの常識を覆す画期的なモデルとなることは間違いありません。
SNS上での反応を見ても、2019年7月5日に8年ぶりに全面改良されて発売される「911」が「ブランドの象徴」として熱狂的に迎えられているだけでなく、EVの「タイカン」に対する期待も非常に高まっています。従来のスポーツカーファンと、新しい技術やエコ意識を持つ層の両方から注目を集めているのが見て取れます。ポルシェは、伝統の「911」という旗艦車をさらに進化させつつ、体験施設の提供やEV「タイカン」の投入、そして将来的なシェアリングサービスへの言及など、「所有」の喜びと「体験」の感動を同時に提供することで、新規顧客、特にミレニアル世代の心をつかみ、持続的な成長を実現していくことでしょう。
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