終身雇用という日本型の雇用慣行が崩壊を迎えつつある現代において、最初から転職を見据えて就職活動に臨む学生が増加しています。その中でも、特に高い人気を誇るのがコンサルタント職です。就活生の間では「コンサル業界はつぶしが利く」という言葉が定説のように語られていますが、この噂は果たしてどこまで真実なのでしょうか。SNSでも「市場価値が上がる」「成長環境がある」と絶賛される一方で、実態を不安視する声も溢れています。専門家への取材から、美名に隠された冷酷な現実が浮かび上がってきました。
コンサルタント出身者が転職市場で高く評価されているのは紛れもない事実です。野村総合研究所で採用を経験し、現在はクライス&カンパニーでキャリア支援を行う山本航さんは、その魅力をスポーツに例えて解説します。優秀な環境で数年間鍛えられた人材は、特定の専門性がなくても、ビジネスにおける総合的な基礎体力が飛躍的に向上するのです。その結果、どのような業界でもそつなく業務をこなせる汎用性の高い人材として重宝され、若くして企業の経営幹部に抜擢される事例も珍しくありません。
拡大する採用枠がもたらす「人材コモディティー化」の危機
しかし、この華やかなイメージに影が差し始めています。近年のコンサルティング業界は市場規模が急速に拡大しており、各社は採用人数を大幅に増やしました。この変化が人材の質的低下を招いていると懸念する声も上がっています。かつては東京大学をはじめとする最優秀層が独占していた業界ですが、現在は上位層の学生が起業やベンチャー企業へと流出する傾向も見られます。採用拡大の背景には、企業の現場に深く入り込む常駐型の案件が急増したという実情が存在しているのです。
大手人材ファームであるハイドリック・アンド・ストラグルズの渡辺紀子さんは、業界の序列に関する厳しい現実を明かします。トップファームとして君臨する「MBB」と呼ばれるマッキンゼー、ボストンコンサルティング、ベインであっても、顧客の要望に応えるために採用のハードルを下げて人員を確保している側面があります。企業の経営層からは、有名ファームであっても能力の劣る人材の参画を拒まれるケースがあり、トップ集団から外れた階層のコンサルタントは、さらに厳しい評価を受ける運命にあります。
昇進の遅れは致命傷!実力主義の階層システム
コンサル業界には特有のピラミッド型の階層構造が存在します。一般的には「アナリスト」という新人のポジションから始まり、経験を積むごとに「アソシエイト」「マネージャー」「プリンシパル」、そして共同経営者である「パートナー」へと昇格していく仕組みです。それぞれの段階に進むための最短年数は明確に定められており、周囲より少しでも昇進が遅れた場合は、転職市場において「能力不足」というマイナス評価を下されてしまうリスクを常に背負うことになります。
さらに、20代後半の現役社員からは衝撃的な本音も漏れています。コンサルタントの数が過剰になったことで個人の希少価値が下がり、業界への就職を周囲に勧められないというのです。かつては企業の経営陣に対して全社的な戦略を提案する「戦略コンサル」と、IT導入などの実行を支える「総合コンサル」の境界が明確でした。しかし、現在はその垣根が曖昧になり、業務改善やシステム構築といった現場の運用を代行する「オペレーション案件」が主流を占めています。
高級人材派遣と化す現場と求められる主体性
こうした現場は「高級人材派遣」と揶揄されることもあり、最先端の自動化ツールであるRPAの導入作業ばかりに従事するコンサルタントも少なくありません。誰もが手に入れられるシステムやITツールの普及によって、コンサル企業自体が独自の付加価値を生み出しにくくなっており、働く個人が期待通りの大いなる成長を遂げることが難しくなっています。学生は目先のイメージに惑わされず、変化の激しい業界の構造を冷静に見極める姿勢が必要です。
一方で、アカデミアの世界では若手研究者を破格の条件で引き上げる革新的な動きが始まっています。北海道大学は20~30代の優秀な研究者を准教授として迎え、最短5年で教授へ昇格させるという画期的な人事制度「アンビシャス若手人材育成システム」を創設しました。現在の教授陣は50代以上が過半数を占めており、これまで登用に関する明確な基準がなかった大学組織において、早ければ30代で教授に就任できる仕組みの導入は極めて異例の試みといえます。
世界的な人材獲得競争に挑む北海道大学の超充実サポート
この新制度では、大学の財務や研究実績などの学内データを集約して分析する「IR(インスティテューショナルリサーチ)」という手法が活用されています。客観的な指標に基づいて有望な人材を抜擢し、准教授の期間には年間で最高500万円程度という従来の常識を覆す潤沢な研究費の補助が行われます。さらに、学内の最新鋭の実験施設や設備を優先的に利用できる特権も与えられ、医学や生命科学、環境問題といった同校が強みを持つ重点分野の研究を強力に牽引します。
こうした破格の待遇を用意する背景には、世界規模で激化する優秀な頭脳の囲い込み論争があります。留学生の増加やオンラインネットワークの進展により、研究者が国境を越えて移動することが当たり前の時代になりました。同校では2018年度に2478人だった大学院の外国人留学生を2021年度までに2600人に増やす計画を掲げており、組織の枠壁を取り払った「大学院改革ステーション」を通じて、個人の特性に合わせたオーダーメイド型の教育プログラムを提供しています。
さらに、創出された高度な技術やサービスをビジネスの現場へと繋ぐため、企業とのマッチングを目的とした「北大アンビシャス博士人材ファンド」も設立されました。博士課程の院生たちの研究活動を支援してくれる企業を広く募るなど、産学連携の動きも加速しています。就職市場でも研究の世界でも、従来の古い慣習にとらわれず、変化の本質を見抜いて自らのキャリアを切り拓く力こそが、これからの時代を生き抜く最大の武器になるに違いありません。
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