長野県千曲市に本拠を置く老舗シャツメーカーのフレックスジャパンが、2020年度から企業の制服製造ビジネスへ本格的に舵を切ることが決定しました。毎年2社から3社の大口受注を獲得することを目標に掲げており、将来的には年間数十万枚の制服向けシャツを生産する計画です。この規模は、同社が製造するシャツ全体の約5%に相当する大きな挑戦となります。
現在、ビジネスシーンでは職場の服装を自由にするカジュアル化が急速に進行しており、従来の主戦場であった紳士向けシャツの需要は伸び悩みを隠せません。こうした市場の変化を背景に、同社は確実に一定の需要が見込める制服という新天地を開拓し、新たな収益の柱を構築しようとしています。この戦略の転換には、ネット上でも「確かな技術を持つメーカーの参入は嬉しい」と期待の声が集まっています。
安定した市場を狙う勝算とメーカーの強み
航空会社や金融機関などで広く採用されている制服は、一拠点での発注量が非常に膨大である上に、一般のアパレル製品のような売れ残りのリスクが発生しないという、経営側にとって極めて魅力的なビジネスモデルです。フレックスジャパンはこれまで、大手紳士服チェーン向けに数多くのシャツを供給してきたため、効率的な大量生産を行うノウハウを十分に蓄積しています。
さらに同社は、個人の体型や好みに合わせて服を仕立てる「オーダーメードシャツ」の自社ブランドも展開しており、その優れたデザイン力や企画力には定評があります。この卓越した技術とトレンドを捉えるセンスこそが、他社との差別化を図る強力な武器になるでしょう。SNSでは「ここのオーダーシャツは品質が良いから、制服の着心地にも期待できる」といった好意的な意見が目立ちます。
異業種連携と海外拠点が支える生産体制
企業の制服を刷新する際は、シャツだけでなくジャケットやボトムスまでをトータルコーディネートで一括採用するケースが大半を占めます。そこで同社は、ジャケット製造に強みを持つ百貨店などとの協業体制を強化し、共同で新規顧客の獲得を目指す戦略を打ち出しました。生産面においては、コストパフォーマンスに優れたミャンマーや中国などの海外工場を活用していく方針です。
矢野経済研究所の調査によると、2018年度の国内ユニフォーム市場は5254億円という巨大な規模を誇っています。フレックスジャパンがターゲットとするのは、工事現場などの作業服を除く、オフィスやサービス業、そして学生服の分野であり、これは市場全体の約半分を占める有望な領域です。未開拓だったこの巨大市場へのアプローチは、同社にとって大きな起爆剤になるに違いありません。
すでに動き出した実績とこれからの展望
本格的な参入を前に、同社は2018年度からテスト展開を開始しており、地元の金融機関から女性用ブラウスを数万枚規模で受注することに成功しました。さらに2019年度には、大手鉄道会社が使用する夏用の半袖シャツを40万枚以上も製造するという大型案件を成し遂げています。こうした実績が呼び水となり、足元では鉄道関連の問い合わせがさらに増加している模様です。
また、同社はオフィス向けだけでなく学生服市場の開拓にも並々ならぬ情熱を注いでいます。2019年度には学生服のトップメーカーから注文を受け、男女の各種シャツを約10万枚も出荷しました。今後はこの分野の営業活動を一層強化する方針を固めており、少子化の中でも質の高い製品を求める学校側のニーズを捉え、さらなるシェア拡大を目指していくでしょう。
編集部が読み解く「制服ビジネス」の意義
今回のフレックスジャパンの挑戦は、成熟したアパレル産業における極めて賢明な生き残り戦略であると私は確信しています。オフィスカジュアルが普及する一方で、企業の「ブランディング」や「組織の一体感」を演出するための制服の価値は、むしろ見直されつつあるからです。高品質なシャツが毎日着用されることで、働く人々のモチベーション向上にも繋がるはずです。
職人のこだわりが詰まったオーダーメードのノウハウが、大量生産される制服にどのように落とし込まれていくのか、その仕上がりが非常に楽しみでなりません。機能性と美しさを両立した新しい制服が日本のオフィスや学校を彩る日は、もうすぐそこまで来ています。同社の持つ高い志と生産体制があれば、この新規事業は必ずや素晴らしい成果をもたらすことでしょう。
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