岩手県洋野町に拠点を置く水産加工の注目企業、北三陸ファクトリーが、国際的な食品衛生管理基準であるHACCP(ハサップ)に対応した新工場を建設し、EU諸国への本格的な輸出拡大を目指すという、非常に意欲的な動きを見せています。HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字をとった略称で、食品を製造する過程で発生しうる危害(異物混入や微生物汚染など)をあらかじめ分析し、その危害を防ぐために特に重要な工程を継続的に管理する衛生管理手法のこと。この基準をクリアすることは、世界市場での信頼性を獲得するためのパスポートとなるでしょう。
2019年6月19日に報じられたこの計画によると、新工場は岩手県洋野町の種市漁業協同組合の市場に隣接する約200坪(約660平方メートル)の土地を取得して建設される予定です。2019年冬に着工し、2020年6月には竣工を見込んでおり、約3億〜4億円を投じる大規模なプロジェクトとなっています。現在の工場も引き続き稼働させ、イワシの内臓を取り除くといった最初の処理工程を担いつつ、新工場ではウニやイワシの加工から包装まで、全ての工程を一貫して自社で手掛ける体制を構築する計画です。これに伴い、現在の35人から全従業員を60人程度に増員し、地域雇用への貢献も期待できるでしょう。
私は、このHACCP対応の新工場建設とEUへの輸出戦略は、北三陸の誇る豊かな水産資源の高付加価値化と、持続可能な水産業のモデルケースとして、日本の水産業界全体に希望を与えるものだと考えます。特に、洋野町で水揚げされるキタムラサキウニは、実が大きく濃厚な甘みが特徴で、その品質は国内外で高く評価されています。同社は、親会社であるウニやワカメの加工を手掛けるひろの屋(2018年10月設立)から、単に殻をむくだけでなく、調理を加えて「北三陸ファクトリー」として出荷することで、ブランド化を積極的に図っているのです。
また、同社が海外進出に際して環境対応を重視する姿勢も、現代の市場のニーズを的確に捉えていると言えます。EU諸国、特にスペインやイタリアなどへの輸出を目指す上では、持続可能な水産業への取り組みが非常に重要視されているからです。北三陸ファクトリーは、養殖や加工、流通が適切に管理されていることを示す国際認証であるASC認証(Aquaculture Stewardship Council認証)の取得も目指しているといい、これは環境への配慮を示す強力な証となるでしょう。このように、国際的な認証を取得し、環境負荷の少ない取り組みを推進することは、今後の世界的な潮流となることは間違いありません。
同社が手掛ける「洋野うに牧場の四年うに『蒸し』」は、2018年の発売以来、伊勢丹新宿店や銀座三越といった大手百貨店で定番商品となるなど、すでに国内で高い人気を誇っています。この「四年うに」は、種市ウニ栽培漁業センターで1センチメートル程度まで育てた稚ウニを一度沖に放流し、3年後に沿岸の養殖溝「ウニ牧場」と呼ばれる岩盤に掘られた溝に移し、そこで昆布を餌にさらに1年かけて大きく育てるという、手間暇かけた独自の養殖方法で生み出されています。この高付加価値なウニや、イワシの加工品などを、HACCP対応の新工場から、生ウニは台湾や香港などのアジア圏へ、そして加工品はEUへと、世界に向けて届ける計画を進めています。
この北三陸ファクトリーの取り組みに対し、SNSでは「地元の誇り!」「世界へ羽ばたいてほしい」といった応援の声や、「高品質な岩手のウニがEUでどう評価されるか楽しみ」といった期待の声が多く見受けられます。HACCP取得を契機に、EUの消費者や企業と接点を持ち、現地の先端技術などを積極的に取り込むことで、さらなる商品開発と販路開拓を加速させていくという同社の挑戦は、地方創生と水産業の未来を照らす希望の光となるでしょう。
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