アフガニスタンの大地を癒した中村哲医師、銃撃の凶弾に倒れる。30年の献身と悲劇の現場を歩く

2019年12月4日の朝、アフガニスタン東部のナンガルハル州ジャララバードで、信じがたい悲劇が幕を開けました。長年にわたり現地の医療と灌漑支援に命を懸けてきた、福岡市のNGO「ペシャワール会」現地代表・中村哲医師が、移動中に何者かによる銃撃を受けたのです。事件発生直後の現場は、まさに凄惨な光景が広がっており、地元住民や関係者の間に深い悲しみと衝撃が走っています。

銃撃が起きたのは、店舗が立ち並ぶ道幅の広い舗装道路でした。中村医師らが乗車していたとされる白いピックアップトラックは、容赦なく放たれた銃弾によってフロントガラスに3カ所の貫通痕が残されています。一部のドア窓は粉々に砕け散り、車両の周囲には痛々しい血痕が広がっていました。男性たちが水をかけ、ほうきで懸命に路面を洗い流す様子からは、あまりにも急な惨劇への戸惑いが感じられます。

事件を受けてSNS上では「先生だけは撃ってはいけなかった」「アフガンの希望が失われてしまう」といった悲痛な声が次々と寄せられました。中村医師は医師という立場を超え、干ばつに苦しむ人々のために「百の診療所より一本の用水路」を掲げて活動してきた人物です。現地の人々にとって、彼は単なる外国人支援者ではなく、共に大地を耕し命を繋ぐ家族のような存在だったに違いありません。

重傷を負った中村医師は、口や腕に医療用のチューブを装着された状態で、担架に乗せられ病院へと緊急搬送されました。青いスクラブ(医療服)を身に纏った病院関係者たちの表情は一様に険しく、緊迫した空気が現場を支配しています。現地では治安当局が銃を手にして厳戒態勢を敷いていますが、平和を願い続けた医師が暴力の犠牲になるという不条理に、多くの市民が祈るような思いで推移を見守っています。

筆者は、今回のような人道支援の象徴が攻撃される事態に対し、強い憤りを感じざるを得ません。中村医師が30年という歳月をかけて築き上げてきたのは、単なるインフラではなく、対話と信頼に基づく平和の礎でした。武器ではなく鍬(くわ)を持ち、砂漠を緑に変えた彼の歩みを止めるような暴力は、決して許されるものではありません。今はただ、奇跡を信じ、彼の無事を願うばかりです。

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