2018年09月に26年ぶりとなる国内発生が確認されてから、家畜伝染病である「豚コレラ」の猛威が止まりません。2019年07月18日時点での農林水産省の発表によりますと、これまでに殺処分された豚は累計で12万2090頭という驚くべき数字に達しました。この規模は、過去最大だった1939年の記録を大幅に塗り替える事態となっており、現場の悲痛な叫びが聞こえてくるようです。
SNS上では「一生懸命育てた豚たちが不憫でならない」「農家の皆さんの精神状態が心配」といった、生産者に寄り添う声が数多く寄せられています。豚コレラは、豚やイノシシに特有のウイルス性疾患であり、非常に強い感染力と高い致死率を特徴としています。幸いなことに、このウイルスが人間に感染することはありませんが、一度養豚場内で発生が確認されると、蔓延を防ぐために飼育されている全ての豚を処分しなければなりません。
政府は野生イノシシを介した感染ルートを遮断するため、2019年07月からは従来の愛知県や岐阜県に加え、三重県や福井県でも「経口ワクチン」の散布を開始しました。これは、ワクチンを含んだ餌を山林に撒くことで野生動物の免疫力を高める手法です。しかし、対策を講じている最中の2019年07月10日にも岐阜県で新たな発生が確認されるなど、事態は長期戦の様相を呈しており、予断を許さない状況が続いています。
食卓への影響と「清浄国」ブランドを守るためのジレンマ
現時点での市場価格は、2019年07月中旬の東京市場で1キロあたり650円前後と、前年並みの水準を維持しています。全飼育頭数の約1%という処分量に留まっているため、致命的な品不足には至っていません。しかし、もし供給不足が現実となれば、私たちの食卓に欠かせない豚肉の価格が高騰する恐れもあります。この目に見えない恐怖に対し、市場関係者の間でも将来的な値上がりを懸念するムードが広がっています。
こうした中、議論の焦点となっているのが飼育豚への「ワクチン接種」です。感染地域の農家からは「再開してもまた感染するのが怖い、一刻も早く接種を認めてほしい」という切実な願いが届いています。一方で、国が慎重な姿勢を崩さないのは、国際的な「清浄国」というステータスを失うリスクがあるからです。清浄国とは、特定の伝染病が発生していないと国際獣疫事務局(OIE)に認定された、衛生管理が極めて高い国の証です。
もしワクチンを使用すれば、検査で「ワクチンの反応」と「実際の感染」の区別が難しくなり、海外諸国から日本産の豚肉に対して輸入制限を課される可能性が高まります。近年、香港やシンガポール、フランスなどへの輸出は右肩上がりで成長しており、輸出業者からは「これまでの海外販路開拓の努力が水の泡になる」と危惧する意見も出ています。輸出を重視する地域と、目の前の被害に苦しむ地域とで、農家の意見も二分されているのが現状です。
私自身の見解としましては、伝統的な輸出ブランドを守る重要性は理解しつつも、まずは現場で汗を流す生産者の生活基盤を最優先に守るべきだと考えます。感染がこれ以上拡大すれば、輸出どころか国内の養豚産業そのものが崩壊しかねません。国には、科学的根拠に基づいた迅速な決断と、ワクチン接種に踏み切った場合でも輸出相手国を納得させられるような、高度な外交交渉力を発揮してほしいと強く願わずにはいられません。
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