中部の空の玄関口である中部国際空港(愛知県常滑市)が、大きな変革の荒波を迎えようとしています。年間1235万人もの人々が国内や海外を行き交うこの巨大空港は、近年の訪日外国人観光客(インバウンド)の急増により、かつてない活気に沸いているのです。
特に2018年度における国際線の旅客数は610万人を記録し、過去最高を更新しました。中国の航空会社による直行便の新規就航や増便が相次いでいることも、この驚異的な成長を力強く後押ししていると言えるでしょう。
ネット上でも「中部空港からの海外旅行が本当に便利になった」「アジア圏へのアクセスが抜群」といった歓喜の声が多数寄せられており、地域の拠点としての存在感が急速に高まっていることが伺えます。
LCC専用ターミナルの誕生と鉄道との美しい共存関係
このような需要の爆発に対応すべく、空港側も矢継ぎ早に次なる一手へと打って出ています。2019年9月20日には、格安航空会社(LCC)向けとなる待望の「第2ターミナル」を華々しく開業いたしました。
マニラや那覇といった国内外の主要11都市を結ぶこの新ターミナルの誕生により、既存の第1ターミナルと合わせて年間2150万人もの旅客を受け入れる盤石な体制が整ったのです。
かつてLCCが台頭した頃は、既存の鉄道インフラから顧客を奪い合うのではないかという懸念の声も一部で囁かれていました。しかし蓋を開けてみれば、経済の活性化に伴って移動そのもののニーズが多様化し、双方の利用者が共に増加するという幸福な相乗効果が生まれています。
象徴的なのが名古屋鉄道との連携であり、空港特急「ミュースカイ」への無料Wi-Fi導入など、移動空間の快適性を高める努力が実を結んでいます。名鉄百貨店の免税売上高が2017年1月1日以降、前年実績を上回り続けている事実が、この共存の成功を雄弁に物語っているでしょう。
2027年リニア開通という「ピンチ」を「チャンス」へ変える逆転の発想
ですが、真の試練と大いなる商機はこれから訪れます。2027年に予定されているリニア中央新幹線の開通は、東京と名古屋をわずか約40分という驚異的なスピードで結ぶため、時間的な優位性において航空業界には強烈な脅威となるはずです。
それでも、中部国際空港の犬塚力社長はこれを「ピンチをチャンスに変えられる絶好の機会」と捉えており、その先に見据えるのは驚くべきことに「首都圏第3空港」としての地位確立に他なりません。
民間シンクタンクの試算によれば、リニア開通によって主要駅から120分以内でアクセスできる「120分圏人口」において、名古屋は5900万人に達し、東京の5200万人を抜いて日本一になる見込みです。
羽田や成田の混雑を回避したい首都圏の旅客を、この圧倒的なアクセスの良さを武器に誘い込もうという戦略は、非常に合理的であり、日本の空の混雑緩和にも大きく貢献する極めて意義深い挑戦であると私は確信しています。
トヨタDNAが導く自動運転「MaaS」と新時代への針路
愛知万博を契機に地元有力企業の共同出資で誕生した同空港は、歴代トップにトヨタ自動車出身者を戴いてきた歴史があり、それゆえに次世代移動サービス「MaaS(マース)」への取り組みにも並々ならぬ情熱を注いでいます。
MaaSとは、あらゆる移動手段をITで統合し、1つのシームレスなサービスとして提供する最先端の概念です。2019年12月16日には、空港内での自動走行バスの実証実験が実施され、深刻化する将来の人手不足を解消する切り札として大きな注目を集めました。
丸紅などの有力企業と連携し、2020年中の実用化を目指すスピード感には目を見張るものがあります。全国の空港で民営化による競争が激化する中、この地政学的優位性と先進技術の融合こそが、中部国際空港をさらなる高みへと押し上げるに違いありません。
コメント