長年にわたり安定した経済成長を続けてきたオーストラリアが、今まさに未曾有の試練に直面しています。英紙フィナンシャル・タイムズのニューズレター「モラル・マネー」が2020年01月08日号で報じたところによると、同国で猛威を振るう大規模な森林火災が、経済の下振れリスクとして深刻視されているのです。SNS上でも「これほどの規模の火災が経済に直結するとは」「地球温暖化の影響が目に見える形で現れた」など、世界中から危機感の募る声が相次いで寄せられています。
格付け会社のフィッチ・レーティングスは2020年01月06日にリポートを公表し、投資家に対して重要な警告を発しました。ブラジルのアマゾンや米国のカリフォルニア州に続き、今回のオーストラリアで発生した事態は、気候変動を「信用リスク」として審査に組み込むことの重要性を物語っています。ここで言う信用リスクとは、融資先や投資先の企業が経営悪化などにより債務を履行できなくなる可能性のことです。環境問題が今や、具体的な金融リスクとして認識され始めています。
かつて米国では、山火事の責任を追及された電力・ガス大手のPG&Eが経営破綻に追い込まれるという衝撃的な事態が起きました。フィッチの分析によると、オーストラリアでは2009年の大火災を教訓に公益企業への規制が強められているため、同様の混乱が起きる確率は低いとみられています。しかし、この天災が国全体の経済にどれほどの悪影響を及ぼすのか、その正確な規模は誰にも予測がつきません。先行きの見えない不安が、市場全体を包み込んでいます。
オーストラリア準備銀行、いわゆる中央銀行は、天候不順による経済失速を懸念して2019年に政策金利を過去最低の0.75%まで引き下げました。今回の災厄によって市場ではさらなる追加利下げへの観測が強まっています。ムーディーズ・アナリティクスのエコノミストであるカトリーナ・エル氏は、2020年02月に開催される予定の会合にて、金利が0.50%へ下落する可能性が非常に高まっていると指摘しており、景気の冷え込みに対する警戒が一段と強まるでしょう。
地元の保険業界団体が明かしたデータによりますと、2019年09月以降に発生した火災関連の保険申請件数は、2020年01月07日時点で早くも8985件に達しました。これは保険会社側の損失が7億豪ドル、日本円にして約520億円に上ることを意味しています。過去5年間の年間平均申請件数が1480件であった事実と比較しても、今回の被害がいかに突出しているかが分かります。しかも、悲しいことにこの被害額はまだ通過点に過ぎないと考えられます。
今回の未曾有の災害は、政治のあり方にも大きな一石を投じることになりました。オーストラリアのモリソン首相は、以前から気候変動に対して懐疑的なスタンスを取っていることで知られており、今回の対応を巡って国内外から厳しい視線が注がれています。今後は世界中の有権者が、化石燃料を優遇するような政策を掲げる政治家に対して、厳しい審判を下す動きが加速していくと考えられます。環境と経済は、もはや切り離せない関係なのです。
今回のニュースは、環境破壊が巡り巡って私たちの財産や投資のリスクとして直撃するという冷徹な現実を突きつけています。単に「自然を大切にしよう」という道徳的な話ではなく、地球の悲鳴がそのまま株価や金利、ひいては個人の生活に影響を与える時代が到来したと言えるでしょう。私たちは利便性や目先の利益だけを追い求める政治や経済のシステムを、根本から見直すべき局面に立たされています。持続可能な未来への投資こそが、最大の防衛策となるはずです。
コメント