男子体操界のエースとして世界を魅了してきた白井健三選手(日体大大学院)が、2大会連続となるオリンピック出場に向けて本格的に始動しました。2020年1月5日に横浜市で行われた新年初練習では、得意の跳馬などで軽快な動きを披露し、順調な調整ぶりをアピールしています。4月から始まる運命の代表選考レースを前に、彼は「毎日を笑顔で過ごし、自分本来のスタイルを忘れない」と力強く誓いました。昨年の苦難を乗り越えたその表情には、新たな決意が満ちあふれているようです。
実は昨年の白井選手は、左足首の怪我に苦しんで思うような結果を残せず、世界選手権の代表の座を逃すという大きな挫折を味わいました。さらに夏には肩も痛めてしまい、競技人生で初となる約半年間もの長期戦線離脱を余儀なくされたのです。SNS上では当時、「白井くんのいない世界選手権は寂しい」「早く万全な姿が見たい」と、多くのファンから心配やエールが寄せられていました。器具に触れることすらできず、ひたすら走り込みを繰り返す日々は、想像を絶する孤独だったに違いありません。
しかし、この苦しいリハビリ期間こそが、彼に大切な気づきをもたらしました。技の練習ができない中で、白井選手は身体を動かせること自体の幸せを再確認したと語ります。「どんなに不調な時でも、鉄棒で車輪が回る喜びや、空中を舞う宙返りの楽しさを忘れたくない」という言葉には胸が熱くなりますね。私たちはつい結果ばかりに目を奪われがちですが、スポーツの原点は「楽しむこと」にあるのだと、彼の真摯な姿勢から改めて教えられる思いがいたします。
近年、体操界ではEスコアと呼ばれる「演技の出来栄え(技の正確性や美しさ)」を厳格に減点する採点傾向が強まっています。白井選手も昨年はこの基準を意識しすぎるあまり、着地の精密さばかりに気を取られていたそうです。しかし彼は、「丁寧な演技ができる選手は他に大勢いる。自分の強みはそこではない」と気づきました。遊び感覚の中から生まれた、ダイナミックで圧倒的な大技こそが彼の真骨頂です。周囲の目を気にせず、自らの個性を信じ抜く決意に、私は深い感銘を受けました。
世界選手権の床と跳馬で計4つの金メダルを獲得した白井選手は、かつての爆発的な勢いと迫力を取り戻そうとしています。美しさを競うだけでなく、観客の度肝を抜くような唯一無二の演技で、再び体操ニッポンを牽引してくれるに違いありません。挫折を知り、精神的にひと回りもふた回りも大きくなった彼が、東京五輪の切符を掴み取る瞬間が今から待ち遠しいですね。日本中のファンが、彼の「楽しい体操」が再び世界を席巻する日を心から楽しみに待っています。
コメント