フランスバロック音楽の最高峰!いずみホール「ピグマリオン」が魅せた知性とダンスの奇跡を徹底解説

クラシック音楽ファンのみならず、多くのアート愛好家の間で大きな話題を呼んでいるステージがあります。大阪市にあるいずみホールにて、2019年12月14日に開催された独自の主催公演「古楽最前線」の第2弾です。

今回のステージでは中後期バロックと呼ばれる、17世紀から18世紀にかけての華やかな時代の音楽がテーマに掲げられました。ホール・オペラという親密な空間のなかで、フランス発祥の舞台芸術であるオペラ・バレの真髄が鮮やかに現代へ蘇っています。

SNS上でも「古楽のイメージが覆るほど刺激的だった」「時空を超えた美しさに感動した」といった熱い反響が数多く寄せられました。音楽史に名を残す礒山雅氏の急逝を受け、その高潔な志を継承した指揮者・寺神戸亮氏の見事な手腕が光る奇跡の公演です。

前半のプログラムでは、ルイ14世に愛された作曲家リュリの作品を中心に、トークを交えたオムニバス形式で物語が紡がれました。「アティス」という演目では、松本更紗氏が当時の宮廷で踊られていたステップを忠実に再現するバロックダンスを披露しています。

さらにソプラノ歌手の波多野睦美氏は、名作「町人貴族」より「イタリア人のエール」を熱唱されました。まるで喉の奥に蝶々が舞っているかのような、フランス・バロック特有の繊細で軽やかな節回しが見事で、聴衆の心を一瞬で鷲掴みにしたことでしょう。

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現代と過去が融合するラモーの傑作オペラ

後半は、本公演のハイライトであるラモー作曲の「ピグマリオン」です。この作品は1748年8月27日にパリのパレ・ロワイヤルで初演され、当時の観客を熱狂させた人気の「オペラ・バレ(歌と踊りが融合した舞台芸術)」として知られています。

物語は、自らが創り上げた美しい彫像に恋をして苦悩する芸術家ピグマリオンの姿を描いたものです。彼の切ない願いを聞き入れた愛の神が人形に命を吹き込むと、舞台上には喜びのダンスが溢れかえり、全員が愛を讃える素晴らしいフィナーレを迎えます。

岩田達宗氏による繊細な演出と、小尻健太氏の卓越した振付は、まさに音楽の教科書に載るような普遍的な美しさです。酒井はな氏と中川賢氏が披露した洗練されたコンテンポラリーダンスは、ラモーが描いた音の粒をそのまま肉体で表現しているようでした。

主役を務めた27歳の気鋭、ドビューヴル氏の歌声にも魅了されます。彼は「オートコントル」と呼ばれる、裏声を使わずに高い音域をクリアに歌い上げるフランス伝統のハイテノール歌手であり、鼻濁音を活かした美しい発音で観客を酔わせました。

愛の神を演じた鈴木美紀子氏の圧倒的な存在感をはじめ、出演者全員が技巧に走りすぎない節度ある表現に徹していた点が印象的です。まさに当時の貴族たちが重んじた「良き趣味」、すなわち洗練された知性と理性の調和が見事に体現されていました。

古楽オーケストラ「レ・ボレアード」が奏でる演奏の端々からも、フランス・バロックの気品溢れる精神が優雅に薫り立ちます。それはまるで、儚くも美しい「うたかたの夢」のような、どこまでも贅沢なエッセンスに満ちた最高のひとときでした。

筆者は、こうした古楽の試みこそが現代の閉塞感を打破するヒントになると確信しています。過去の楽譜を忠実に再現するだけでなく、現代のダンスと融合させることで、数百年も前の芸術が今を生きる私たちの血肉として鮮烈に蘇るのだと感じました。

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