公的年金制度の大きな転換期が訪れようとしています。2020年1月より始まる通常国会に向けて、生活設計を左右する重要な改革案が提出される見込みです。現役世代にとっては将来の安心に直結する内容であり、SNSでも「いよいよパートでも年金が増える」「働き方を考え直さなきゃ」といった、今後の働き方への関心の高さがうかがえる声が数多く寄せられています。今回の改正は、私たちが何を選択すべきかを深く問いかけているのです。
改革の目玉となるのが、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大になります。これまでは従業員数が501人以上の企業などが対象でしたが、この基準が段階的に引き下げられる方針です。具体的には2022年10月1日から101人以上、さらに2024年10月1日からは51人以上の企業へと広がります。これにより、中小企業で働くパートタイムの方など、約65万人もの人々が新たに厚生年金へ加入できる見通しとなりました。
ここでいう「厚生年金」とは、会社員などが加入する公的年金であり、保険料を会社が半分負担してくれる大変お得な制度です。さらに、勤務先の健康保険にも同時に加入できるため、病気で働けない期間の傷病手当金や出産手当金といった、国民健康保険にはない手厚い保障も手に入ります。目先の生活費だけでなく、将来もらえる年金額を増やすためにも、この適用拡大は働く側にとって非常に大きなメリットをもたらすでしょう。
75歳まで選べる受給開始!シニア世代の就労を後押しする新制度
高齢期のライフスタイルに合わせた「受給開始時期の選択肢拡大」も注目すべきポイントです。年金を本来の年齢より遅れて受け取る「繰り下げ」の上限が、現在の70歳から75歳へと引き上げられます。仮に75歳まで我慢した場合、毎月の受給額は基準より84%も増加する仕組みです。人生100年時代において、元気に働き続けられるシニア世代にとっては、将来の大きな収入源を確保するための強力な武器になるに違いありません。
さらに、働いて一定以上の収入があると年金がカットされてしまう「在職老齢年金制度」も、65歳未満を対象に見直されます。減額が始まる基準額が、月収と年金の合計で現在の28万円から47万円へと一気に引き上げられる計画です。厚生労働省の試算によると、対象者の約3分の2が年金を減らされずに働き続けられるようになります。仕事へのモチベーションを高める、素晴らしい方向転換であると私は高く評価しています。
シニア世代が働くメリットはそれだけではありません。「在職定時改定」という、毎年1回支払った保険料を年金額に反映させる画期的な仕組みも導入されます。現行制度では、退職時などにまとめて計算し直されていましたが、今後は働きながら毎年年金が増えていく喜びを実感できるようになるのです。こうした柔軟な制度設計こそが、高齢者の知恵や経験を社会全体で生かすための重要な鍵を握っていると言えます。
高所得者の負担増と「マクロ経済スライド」がもたらす厳しい現実
一方で、現役の現役世代の中で高収入の方には、少し耳の痛い変化も待ち受けています。毎月の保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」の上限が、2020年9月1日から現在の最高62万円から65万円へと引き上げられる方針です。標準報酬月額とは、個人の給与を一定の幅で区切った区分のことで、実際の月給が63万5000円以上ある方は負担が増加します。企業と本人の合計で年約3万3000円の負担増となり、事前の準備が必要です。
また、すでに年金を受け取っている世代にとっても、手放しでは喜べない現実が潜んでいます。2020年4月1日からの年金額は、物価の上昇ほどには増えない「微増」にとどまる見込みです。これは、現役世代の減少や平均寿命の伸びに合わせて機械的に年金の給付額を抑える「マクロ経済スライド」という調整機能が、2年連続で発動される可能性が高いためになります。ネット上でも「実質的な目減りではないか」という不安の声が目立ちます。
物価が上がっても、現役世代の賃金が上がらなければ年金も増えない今の仕組みは、ある意味で残酷かもしれません。額面が少し増えたとしても、買い物で使えるお金としての「実質的な価値」は低下していくと考えられます。国に依存しすぎず、増える選択肢を賢く活用しながら、自らの足で立つ生活設計を描くことが何よりも求められています。今こそ、私たち一人ひとりがマネープランを真剣に見直すべき時なのです。
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