シニア世代の働き方が大きな転換期を迎えています。政府は高齢者の就労を後押しするため、いわゆる「70歳定年法」と呼ばれる高年齢者雇用安定法の改正案を通常国会へ提出する方針を固めました。少子高齢化が加速する日本において、労働力の確保と社会保障費の維持は急務となっています。今回の法改正は、まさに国全体の未来を左右する重要な一手と言えるでしょう。
この法案は2019年06月の閣議決定を経て、同年末の政府会議で方向性が示されました。スムーズに国会を通過すれば、2021年04月01日からの施行が予定されています。これまでは65歳までの雇用確保が中心でしたが、今後はさらに年齢を引き上げ、元気なシニア層が社会を支える主役になっていくことが期待されているのです。
ネット上でもこの動きは大きな話題を呼んでいます。SNSでは「まだまだ現役で働きたいから嬉しい」という前向きな声がある一方で、「一生働き続けなければいけないのか」と将来に不安を感じる投稿も散見されました。働く人々の間でも、期待と戸惑いが複雑に交錯しているのが現状のようです。
新たな選択肢と企業の努力義務
現在の制度でも、企業は定年の廃止や延長、または「継続雇用制度」の導入が義務付けられています。継続雇用制度とは、定年を迎えた社員を契約社員や嘱託として雇い直す仕組みのことです。厚生労働省の2019年06月の調査によると、約8割の企業がこの継続雇用を導入して対応しています。
今回の改正では、60代後半の就労をさらに促すため、新たに4つの選択肢が追加されます。具体的には、他社への再就職支援や、独立してフリーランスや起業の道を選ぶ人への業務委託、さらにはNPO法人などでの社会貢献活動への支援といった、これまでにない柔軟なメニューが並んでいるのが特徴です。
企業はこれらのうち、少なくとも1つ以上を導入する必要があります。ただし、現段階ではペナルティのない「努力義務」にとどまる見通しです。しかし、将来的には義務化される可能性も高いため、企業側は今からシニア世代が活躍できる環境づくりを真剣に進めていく必要があるでしょう。
社会保障の支え手へ!変わりゆく高齢者雇用の目的
これまでの高齢者雇用は、年金が支給されるまでの「生活費を稼ぐつなぎ」という側面が強かったと言えます。しかし、これからはその目的が大きく変わります。元気なシニアが働き続けることで、年金や医療、介護といった「社会保障の支え手」になってもらうという、国の大きな戦略へとシフトしているのです。
年金の受給開始時期を75歳まで遅らせて、その分もらえる額を増やせる制度改革も予定されています。働くシニアが増えれば社会保障費の負担が軽減され、国全体の財政にも好影響を与えるでしょう。健康で長く働ける環境が整うことは、長寿社会を豊かに生きる上でもポジティブな要素になるはずです。
現場から上がる不安と今後の課題
一方で、受け入れ側である企業からは戸惑いの声も漏れています。特に中小企業からは、「大企業のように再就職をあっせんできる取引先がない」といった切実な意見が聞かれます。法改正によって再就職の『実現』まで企業が責任を持つとなれば、リソースの少ない企業にとっては大きな負担になりかねません。
また、フリーランスへの業務委託についても、「どれくらいの期間契約を続ければ義務を果たしたことになるのか基準が不透明」という専門家の指摘もあります。単に法律を作るだけでなく、企業が迷わず運用できるような明確なガイドラインがなければ、現場の混乱を招くだけになってしまうでしょう。
高齢者が活躍できる社会を作るという方向性自体は、時代に即した素晴らしい試みだと感じます。しかし、現場の負担を無視した制度設計では意味がありません。政府には国会審議を通じて、企業や働く人々が抱く疑問や不安に対して、誠実で分かりやすい説明を行うことを強く望みます。
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