近年、インターネット通販の急拡大により、私たちの生活は格段に便利になりました。一方で、SNSなどでは「小さな商品なのに大きな段ボールで届いて処分が面倒」といった消費者の声も頻繁に見かけます。
そんな現場の課題や不満を解決すべく、古くからの伝統産業である製紙業界が大きな変革期を迎えているのをご存知でしょうか。もはや単なる「箱」や「紙」の素材を売るだけのビジネスモデルは、過去のものになりつつあります。
王子ホールディングスやレンゴーといった大手各社は、モノと同時に付加価値の高い「サービス」を提供する新たな形へとシフトしています。本日は2020年1月7日時点の最新動向を踏まえながら、素材メーカーが挑む次世代の戦略に迫っていきましょう。
通販の常識を変える王子ホールディングスの自動梱包
王子ホールディングスは2019年12月、商品の3辺サイズを自動で計測し、最適な大きさの箱を作り出す画期的な包装システムの販売をスタートさせました。
これはコンベヤー上の商品をセンサーで認識し、隙間なく梱包した上で、送り状の印刷から貼り付けまでを全自動で行うという優れものです。導入すれば、書籍や化粧品といった小さな商品でも、無駄な空間のないピッタリの箱で出荷することが可能になります。
特筆すべきは、あらかじめ切断された箱ではなく、連続して折り畳まれたシート状の段ボール材を機械とセットで提供している点でしょう。これにより、通販業者は何千種類もの在庫を抱える必要がなくなり、倉庫スペースの劇的な削減につながるのです。
TwitterなどのSNSでも「過剰包装が減るのは環境に優しくて素晴らしい」「箱を潰す手間が省けるのは大歓迎」といった好意的な反響が多数寄せられており、消費者目線でも非常に価値の高いソリューションだと言えます。
レンゴーと日本製紙が展開する独自のアプローチ
一方、こうしたサービス化にいちはやく取り組んでいたのがレンゴーです。同社は2012年からいち早く自動梱包機に着手し、現在では組み立てるだけで木目調の陳列棚になる「マルシェキット」などを開発しています。
さらに、購買意欲を高める「POP(店頭販促物)」を箱そのものに印刷し、カッター不要で簡単に開封できる仕組みも提供中です。開封から陳列までの時間を約5分の1に短縮できるため、人手不足に悩む小売業界にとって救世主となるでしょう。
また、日本製紙は自社工場の操業ノウハウを活かし、あらゆるモノがネットに繋がる「IoT(モノのインターネット)」を活用した監視システムを外販する企業として注目を集めています。
モーターなどに無線センサーを取り付けて振動や温度を計測し、2017年から技術者が直接巡回しなくても異常を検知できる仕組みを展開し始めました。一般的なシステムの約3分の1という低価格を実現し、すでに国内外の多くの企業で採用されています。
編集長視点:なぜ「モノ売り」からの脱却が必要なのか
これらの動向から見えてくるのは、素材メーカーにおける「XaaS(X as a Service=あらゆるモノのサービス化)」の潮流です。単に良質な素材を大量生産して安く売るだけでは、多様化するニーズや国際競争を勝ち抜くことはできません。
とくに米中貿易摩擦などの影響で市況が不安定な現在、利益率の高い高付加価値なサービスを提供し、顧客との結びつきを強固にすることは、企業が生き残るための必須条件だと私は考えます。
旭化成やドイツのBASFなど、製紙以外の業界でも同様の顧客支援型サービスは広がっています。自社の強みを活かしたソリューション提案こそが、今後のモノづくり企業の価値を決定づける最重要キーワードになるはずです。
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